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zoom RSS テーマ「ミステリー」のブログ記事

みんなの「ミステリー」ブログ

タイトル 日 時
200 『神のロジック 人間(ひと)のマジック』 西澤保彦
★★★★☆ 「本格ミステリそのもの」といえる程、ごく中心的な題材・舞台設定・構成・トリック等々を使いながら、文字通り「恐ろしいほど」、マクロで引いた視点から「本格ミステリ」を描いた作品、だろうか。 あまり「あらすじ」的なものを書くのは好きではないのだが、今作では必要があると思うので。舞台は「謎の学校」、そしてクローズド・サークルモノ。主人公たちはその閉じられた「学校」に世界各地から連れて来られ、奇妙な「犯人当てクイズ」を課され続けている。そこに新たに一人の新入生が加わった時、「学校」は崩壊を... ...続きを見る

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2010/06/02 01:59
199 『黄金色の祈り』 西澤保彦
★★★☆ 「自伝的ミステリ」とでもいおうか、作者本人の実体験に基づいている部分が多いように思える。 そして、「匠千暁シリーズ」を「裏焼き」・「反転」させたような物語、という印象も感じた。 今作の一番の特長は、「人の心」の描きかただと思う。「匠千暁シリーズ」でも他の「SF本格」でも、西澤は「人の心」の「異常な点」を全面に出すことで、固定して、「不変的でロジックに組み込めるモノ」として取り扱ってきた。しかし、本作では「人の心」は非常にやわらかく、登場人物のそれぞれが揺れ動く。非常に作者「らしく... ...続きを見る

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2010/06/01 02:52
197 『パズラー 謎と論理のエンタテインメント』 西澤保彦
★★★☆ いうなれば、「本格ミステリの賽の河原」、積んでは崩され積んでは崩され…。 副題「謎と論理のエンタテインメント」には偽り無し、「本格ミステリ」としての「謎と論理」は徹頭徹尾張りめぐらされており、でありながら「エンタテインメントであること」を強烈に意識して書かれている、という印象。 6編の短編からなるが、その「謎と論理」の「材料」はほぼ全てが「人物」であり、彼ら彼女らは「ピース」以外の何物でもなく、「権利」を持たず、その「背景」ですら実用一辺倒の薄い薄いものがあるだけ。西澤的「心理ミ... ...続きを見る

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2010/05/30 00:54
196 『リドル・ロマンス 迷宮浪漫』 西澤保彦
★★★ 「本格ミステリ」としては、かなりの「怪作」、或いは「問題作」。 8編の短編からなるが、その「主人公」たちは、探偵役に「願いをかなえてほしい」と依頼に来る、「クライアント」である。そしてこの「心理探偵」は彼女たち(クライアントは女性)の依頼に対して、実際的な「調査」も、「推理」さえもしない。本作における「探偵」は、「心理」しか扱わない。事件は基本的に「心の中」にしか存在しないし、その「解決」と考えられる部分にも、外的な裏づけはなく、言うなれば「無根拠」の状態であり、そのまま物語は収束す... ...続きを見る

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2010/05/29 01:18
195 『異邦人 fusion』 西澤保彦
★★★ ストレートな「SF本格ミステリ」、テーマも「タイムスリップ」と王道。 未解決のままとなっている、23年前に父親が殺された事件、その時に戻ってその真相を解明する、という筋。 「謎」という意味での「本格ミステリ度」は高くないが、その「収束感」という意味では「正に本格ミステリ」だと思う。その上で「社会派」的な視点や、「アイデンティティの物語」という側面も持つ。 これだけの「材料」があればもっと重厚・壮大な物語を作ることもそれ程難しくないだろう。逆にこれだけのボリュームで「腑に落ちる」ス... ...続きを見る

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2010/05/28 01:52
194 『黒の貴婦人』 西澤保彦
★★★☆ 「匠千暁シリーズ」の第8作目であり、中・短編集としては3作目。(「謎亭論処」は未読) 40〜60ページの短編が4作と、150ページほどの中編、計5作品からなる。 時系列的には「バラバラ」である、作者の中・短編集ではどれもそうだが。「安槻大学」という共通項から外れている作品も多いし、「4人組」の全員が登場しない作品もある。しかし、作者の描く彼らの「空気感」は変わっていないし、短いこと+ストーリーの軽さもあり、長編のように「覚悟を決めて読む」必要はない。 また、このシリーズ「らしさ... ...続きを見る

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2010/05/27 02:38
193 『依存』 西澤保彦
★★★★☆ 「本格ミステリ」が「人の生死をもてあそぶ小説」なのだとしたら、「そうでない小説」は「人の心をもてあそぶ小説」なのではないだろうか。決定的な違いは「もてあそばれる」のが「本格ミステリ」では「登場人物(の生死)」であるのに対して、「そうでない小説」では「読者(の心)」である、ということ。 だからこそ「本格ミステリ」は、現実から遊離している、リアリティがない、人が描けていない…。そう考えるなら、そしてそれを単純に「フィクション」としてみるなら、「本格ミステリ」はより高度なところに位置す... ...続きを見る

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2010/05/26 02:44
192 『スコッチ・ゲーム』 西澤保彦
★★★☆ 様々な意味で「記念碑的作品」だろうか。シリーズ長編第4作であり、「探偵役メンバー」のひとりであるタカチが「事件の主役」になっている(引きずり込まれている)作品。このシリーズであるから当然「ドロドロヘビー」なストーリー展開であるし、そこに描かれる「感情」は醜いものばかりだし、その渦中にいる人物は、酷く傷つけられる「被害者」と、誰かを傷つけている事すら気付いていない質の悪い「加害者」、という構図だし…。 そこに主人公たちが「当事者」として巻き込まれてしまうのだから、「気楽に読める作品で... ...続きを見る

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2010/05/25 02:59
191 『仔羊たちの聖夜』 西澤保彦
★★★☆ 「匠千暁シリーズ」の長編第3作。(ちなみに「第2作」は「麦酒の家の冒険」) タイトルの通りクリスマスイブに起こるこの事件は、主人公たちが出会う「きっかけ」となった事件でもある。時系列的にはこのシリーズ一番はじめの事件。この事件に「魅力」を感じる人なら、このシリーズにどっぷりはまれるだろう。 ...続きを見る

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2010/05/24 07:30
190 『彼女が死んだ夜』 西澤保彦
★★★ 「匠千暁シリーズ」の長編第1作。「まだキャラクターがしっかり固まっていないなぁ…」などと斜に構えて読むのもひとつかもしれない。「4人組」の最後のメンバー、ウサコに至っては全くの「チョイ役」でしかないくらいだし。しかし、作者の「志向」は既に十分見えている。(完成度においてはもうひとつ、と感じたが) ...続きを見る

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2010/05/23 23:46
189 『複製症候群』 西澤保彦
★★★ 「今度はコピー人間だ!」、作者にかかれば、大概の「メジャーなSF設定」を「本格ミステリ」に取りこむことは朝飯前なのだろう。きっとその設定を「必要とする物語」を考える方が、創作としては難しいことなのかもしれない。 (ちなみに、自分は「チョーモンインシリーズ」は未だひとつも読んでいない、西澤保彦の「ペース」について行ききれないので、今の所手を出さないでいる) 今回の「SF設定」は「人間(生物)をコピーしてしまう、天から繋がるオーロラのような光の幕」、である。この通称「ストロー」はその名... ...続きを見る

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2010/05/22 02:40
188 『瞬間移動死体』 西澤保彦
★★★ 「タイトルに偽り無し」の、作者の土俵、SF設定を取り入れた本格ミステリ。 さて今回の「設定」は…。主人公は「テレポーテーション」が使える、そして主人公自身が犯罪を計画する、つまり「倒叙モノ」でもある、普通なら(?)完全犯罪が成立して終わりだろう。 当然のことながらここからが西澤保彦、このテレポーテーション能力は欠陥だらけである。まずテレポーテーションの「燃料」としてアルコールが必要なのだが、主人公は極端な下戸であるということ。次にテレポート先に何も持っていけないということ、服さえ脱... ...続きを見る

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2010/05/21 00:48
187 『死者は黄泉が得る』 西澤保彦
★★★★ 山口雅也「生ける屍の死」へのオマージュだと、本人があとがきで書いている。また、ロバート・ゼメキス監督の映画、「永遠に美しく……」のテイストに近いとも書いている。(あのブルース・ウィリスは個人的に好き) ともかく、タイトルの通り死んだはずの人間が、動き、喋り、別の人間を殺そうとする。 今回のSF設定は〔町外れの館にある、死んだ人間を復活させるSUBREとその人間に擬似の記憶を植え付けるMESSというふたつの装置、そしてそこで仲間を増やし暮らす女性たち〕そして、その隣街で起こる女性を... ...続きを見る

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2010/05/20 03:03
186 『盗まれて』 今邑彩
★★★★ 非常に粒の揃った短編集、計8編、初出95年、全て30〜50ページ。読んで損はない。 作者はいわゆる「トリックメーカー」ではない、この作品集に使われるトリックも大きくないものが多い。しかし、「人物や心理」と「トリック」を融合させる、作者得意の作品にはちょうど良いバランスの作品ばかりだ。 ...続きを見る

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2010/05/19 02:24
185 『七人の中にいる』 今邑彩
★★★☆ 十分に「本格ミステリ」であるが、その上で「心理サスペンス」の方が勝っている。どちらが好きでも面白く読めることは請合いだし、それは小説としての「濃度の高さ」も意味する。じっくり腰を据えて読んでほしい。 ...続きを見る

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2010/05/18 20:16
184 『時鐘館の殺人』 今邑彩
★★★ 6編からなる作品集。はじめの3編は短編の長さ、続く2編は「奇妙な味」だろうか、そんな「分類」が正しいのか分からないのだが。ラストは表題作であり、かなり奇抜な中編。 ...続きを見る

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2010/05/17 03:00
183 『そして誰もいなくなる』 今邑彩
★★★★ いうまでもなく、クリスティの「そして誰もいなくなった」を元にした作品。舞台は「絶海の孤島」ではなく、現代の名門女子高(生徒達の住む「街自体」或いは、その学校の「演劇部」ともいえるが)。 ...続きを見る

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2010/05/16 05:29
182 『幸福荘の秘密 続・天井裏の散歩者』 折原一
★★★☆ 「この作品では叙述トリックが使われています」、そんなことを書いても「ネタバレするな!」などと怒られない、唯一の(?)作家。もちろんこの作品でも叙述トリックが使われています。 前記作の続編。できるなら順番に読んだ方がいい、プラスアルファの面白さが味わえるだろう。前作以上のテンションで、ムチャクチャなストーリーが進行する。そしてこれも「折原らしい」、登場人物の卑屈感、全体に漂う胡散臭さ、振り切れた無茶苦茶さ、なんともいえない気持ちの悪さ。これぞ「折原ワールド」か?。 言うなれば、「冗... ...続きを見る

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2010/05/15 03:45
181 『天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記』 折原一
★★★★ 「最後のトリックであなたは見事に背負い投げを喰わされるでしょう」。「本格ミステリ」における、解説や裏表紙の「あおり文句」としてはごくごくメジャーなもの。 そのテイストでこの作品を表するなら、「最初から最後まで師範との“乱取り”です、あなたはただあらゆる技で投げられ続けるだけでしょう」、そんな印象。裏表紙には“九転十転のドンデン返し”と書いてある、首肯。 が、作者の「叙述トリック」としてはせいぜい中級編、一撃の切れ味が鋭い為、分かりやすさでいったら「易しい」部類に入るかもしれない。... ...続きを見る

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2010/05/14 03:54
180 『黒衣の女』 折原一
★★★ 叙述トリックミステリの「入門編」、難易度が低い訳ではないが、「理解しやすさ」という意味で。 ...続きを見る

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2010/05/13 03:40
179 『螺旋館の殺人』 折原一
★★★☆ 作者のかなり初期の作品であり、叙述トリックとしても割合シンプル。しかし、それでも手に負えない。そしてこの作品の「構造」をよく考えると、とんでもない「落とし穴」の気配を感じてしまう。 「本格ミステリ」を読む時、当然その中に書かれている事の内、小説内での「現実」と「虚構」の間に線引きをする必要がある。そうしないと「推理」が成り立たない。そして「叙述トリック」の場合は書く側はその「書き方」によって、誤った方向へ「推理」を導く。(あくまでも「方向を誤らせる」のであって小説内の「現実」でない... ...続きを見る

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2010/05/12 03:42
178 『生首に聞いてみろ』 法月綸太郎
★★★☆ この作者が「追い続けている」、テーマでありモチーフ。 だが徐々に「本格ミステリ」から離れていっているように感じるのは自分だけか。タイトル通り「首無し死体モノ」であるが、「謎」自体に「信頼性」、「客観性」或いは「絶対性」というような、「外側から担保されるもの」があまりに少ない。事件が起こり、それが展開していく「場」が「人の内側」に入りすぎている、という感じ。その上今作では、事件の進行を追いながら、の推理になるため、サスペンス的なストーリー展開が避けられない。 更に、作者の描く「探偵... ...続きを見る

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2010/05/11 03:05
177 『二の悲劇』 法月綸太郎
★★★☆ 「二人称」で始まる物語、“きみは歩いている”という書き出し。それは「きみ」の「ぼく」の「登場人物」の「探偵」のそして「作者」の「読者」の、いわゆる「アイデンティティの物語」であること象徴であろう。 「本格ミステリでない」、とは思わないが「本格ミステリである」部分は少なく、それこそ2割位、という印象。分類するなら「心理サスペンス」だろうか。本作は、ほぼ「動機の物語」であるとも言えるし、「謎の物語」ではあるが「謎解きの物語」ではない、という言い方もできるかもしれない。 ...続きを見る

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2010/05/10 04:33
176 『一の悲劇』 法月綸太郎
★★★☆ 「誘拐」それも「誤認誘拐」がメインの「謎」である。そしてこのテーマで探偵が登場するなら、ほとんどの場合、事件と推理は同時に進行する。それは物語にサスペンスの要素が加わり非常に「引力が強い謎」になる、平たく言えば「魅力的」ということ。そして、イコール「書くのが難しい」ということでもある、だろう。 ...続きを見る

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2010/05/09 05:40
175 『安達ヶ原の鬼密室』 歌野晶午
★★★★☆ まず、この作品はなるべく一気に読んでほしい。できれば1日で。切れ切れによむと作品の一番美味しい所が味わえないだろう。1日が無理でも探偵が登場する280ページまでは続けて読んでほしい、個人的意見。 ...続きを見る

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2010/05/08 03:21
174 『館という名の楽園で』 歌野晶午
★★★ これもタイトル通り。「館」が舞台であり、「主役」でもある中編。「館」の主人は「探偵小説愛好家が高じて」、自らが“時計塔のある、西洋の甲冑が飾られた、マントルピースの上に銀の燭台が載った、降霊会が催されるような、突然の嵐に外界と隔絶されるような、首無し死体が発見されるような、館”に住むという夢を実現させてしまった、男である。…というか、この時点で既に「本格ミステリ好き」以外は「意味不明…」、と本を棚(本屋の)に戻すのではないだろうか。 ...続きを見る

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2010/05/07 03:26
173 『生存者、一名』 歌野晶午
★★★☆ 短いストーリーだが、「孤島モノ」である。 当然のことながらそこに取り残されたメンバー(都内で爆弾テロを行い、逃亡中の新興宗教の信者5人)は次々と殺され、減っていく。そこでの「謎」は当然、「誰が?」と「何故?」だろう、タイトルが示すとおりの残酷な、でありながら「本格ミステリ的に美しい」解決が待っている。中編なので詳細は省くが、作者の「構成力」が非常に光る作品であり、ラストでの「収束感+α」は見事。 ...続きを見る

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2010/05/06 03:23
172 『家守』 歌野晶午
★★★★ “「家」に籠もる人間の妄執を巧みな筆致で描く――(裏表紙より)”、本格ミステリ5編からなる短編集。 形容するなら作者が「技巧」を見せた作品集、だろうか。それも実に様々に、5編全てでそれぞれ違う「技巧」を見せている、という感触。 ...続きを見る

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2010/05/05 03:35
171 『ジェシカが駆け抜けた七年間について』 歌野晶午
★★★☆ 端整な「謎解き・プロット」という縦糸と、リアリティのある「舞台やテーマ・人間」という横糸が、それぞれがもう一方を求め合う、という理想的な形で織り上げられている。 そして、前者「本格ミステリとしてのロジック」と、後者「スポーツ小説としての読み心地」、その「重心」はどちらにも寄らず、半ばあたりだと感じた。「本格ミステリが読みたい」人にはやや不足感が残るかもしれない。 ...続きを見る

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2010/05/04 02:52
170 『ブードゥー・チャイルド』 歌野晶午
★★★☆ 「非常に古典的」でありながら「非常に現代的」な「本格ミステリ」という印象。 「不可解な謎」や、「名探偵登場」に「推理の積み重ね」・「ラストでの衝撃」は「古典的」というに相応しい構成。タイトルもそうだが、オカルティックなあらすじ、冒頭の謎からの見事な「本格ミステリ的着地」は「様式美」さえ感じるし、使われる「トリック」も「新奇」なものではない。 一方、「舞台」や「テーマ」、主人公たちや「天才少年探偵」の登場などは、「現代的」。「現代であること」が必要不可欠な要件であり、その延長上とし... ...続きを見る

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2010/05/03 19:05
169 『弥勒の掌』 我孫子武丸
★★★☆ 「本格ミステリ」においての最大の要素のひとつである「驚き」、この作品の「驚き」は「極大」である。その「形」に不満を持つ人もいるだろうが(「極大な驚き」にはつきものだろうが)、個人的にはアリだと思う。そしてこの作品は、我孫子の「本格ミステリを引いて見る視点」が描かれた作品だろう(迂遠な表現だが)。 ...続きを見る

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2010/05/02 01:59
168 『少年たちの四季』 我孫子武丸
★★★★ 「本格ミステリ」の濃度は控えめ、作者のいうとおり「ジュヴナイル」であり、「青春小説」又は「成長小説」である上に、一応「本格ミステリ」でもある、というくらいの立ち位置で書いているようだ。 ...続きを見る

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2010/05/01 02:58
167 『たけまる文庫 謎の巻』 我孫子武丸
★★★★ 全部で8編からなる、「謎の巻」というタイトル通りの「本格ミステリ的謎」にあふれた短編集。 上にも書いたが、この作者の「収束力」は作者ならではの能力といえるだろう。「本格ミステリ」にプラスされるのは、物理トリックそのものから、SF設定に「サイコホラー」、生理的嫌悪、そして純粋ロジックまで。 ...続きを見る

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2010/04/30 02:28
166 『たけまる文庫 怪の巻』 我孫子武丸
★★★☆ 「親本」の時は色々あったらしいと「あとがき」にありましたが、そっちは全く知らないのでスルーで。 全部で9編からなる短編集であり、「怪の巻」とタイトルにあるように「ホラー」の色をメインにした作品集。さらに前半7編には共通の「隠しテーマ」がある(「隠し」といえるほど隠れてもいないが)。 短い作品が多く、「引き込まれる」怖さは薄いが、それぞれに十分インパクトがある。これ程「縛り」のある中で、これ程のレベルの作品をこれだけ並べられるのは「作者ならでは」といえるのではないか、と思う。作品ご... ...続きを見る

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2010/04/29 03:25
165 『まほろ市の殺人 夏 夏に散る花』 我孫子武丸
★★★ 「架空の街、まほろ市を舞台にする」という縛りの、4人の作家の「連作」の形をとった中編の内の1編。それぞれのの事件に明確な繋がりはない(軽く言及したりする「遊び」はあるが)。 ...続きを見る

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2010/04/28 04:11
164 『まほろ市の殺人 冬 蜃気楼に手を振る』 有栖川有栖
★★★ 祥伝社が行った「競作シリーズ」のひとつ、同じ「まほろ市」を舞台に4つの事件が1年の間に起きる。それを4人の作家がそれぞれ書く、という企画。個人的には面白いと思ったのだが、あまり評判はよくないようだ。 ...続きを見る

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2010/04/28 04:10
163 『白い兎が逃げる』 有栖川有栖
★★★★ これも「火村&有栖」の4編からなる作品集。作者があとがきで「中編集」と呼んでいるのだから、そうなのだろうが、前半の3編は文庫版で60〜70ページなので、「短編」という印象(自分の場合このページ数、「この作者」なら30分程度で読めるので「短編」かと)。トリを飾る表題作は「中編」。 「このシリーズの短・中編集」としても既に8作目であり、物語として揺るぎない安定感があり、それでいながら手抜きのないロジックを徹底し、斬新なトリックを用い…と、非常においしい。 ...続きを見る

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2010/04/27 03:27
162 『絶叫城殺人事件』 有栖川有栖
★★★★ これもやはり犯罪学者・火村と推理作家・有栖が謎解き役を務めるシリーズ。 短編〜中編の長さの、それぞれ個性的な建物の名がついた「殺人事件」の物語6本からなる。 ...続きを見る

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2010/04/26 05:27
161 『暗い宿』 有栖川有栖
★★★ 「火村&有栖」コンビによる、「宿」をテーマにした4編からなる短編集。 シリーズものであること、短編集であることから「難しくない」とはいえる、今作をステップとしてこのシリーズを、この作者を読んでもらう、というのも可能かもしれない。だが「難しくない」ことは、イコール「易しい」ことや、もっといえば「安易」とは違う。 ...続きを見る

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2010/04/25 02:59
160 『ジュリエットの悲鳴』 有栖川有栖
★★★☆ ノンシリーズの短い作品を贅沢に12編集めた1冊。その内4作は「ショートショート」・「超短編」という短さ。テーマも世界観も面白味も印象も登場人物も、作品の長さもバラバラであり、もちろん「読みどころ」も「好み」もそれぞれだろう。シリーズものではない、ということの一番のメリットのは、「気にすることが少なくて書ける」ということだろうか。作者の「全く本格ミステリでない作品」も読める。 ...続きを見る

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2010/04/24 02:52
159 『朱色の研究』 有栖川有栖
★★★★☆ 個人的には、「火村&有栖シリーズ」の長編の中でもかなり好きな作品。 「本格ミステリ」の内にありながら「本格ミステリを超えた本格ミステリ」ではないか、と思っている。 ほとんどネタバレの感想になるので、未読の方は読まないほうがいい。 ...続きを見る

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2010/04/23 03:00
158 『海のある奈良に死す』 有栖川有栖
★★★ 「本格ミステリであることを利用した作品」、だと感じた。だが、作品自体にトリックが仕掛けられたタイプの作品、ということではない。やや中身(仕掛け)に踏み込む感想になるので、予断無く作品を読みたい方は先へ進まない方がいい。 ...続きを見る

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2010/04/22 03:05
157 『ダリの繭』 有栖川有栖
★★★☆ 「臨床犯罪学者・火村英夫と、ミステリ作家・有栖川有栖」シリーズの長編第2作(だと思う)。 「ロジカルであること」に対しては、非常に高いレベルに到達している、「パズラー的」である、ともいえるし、また「純粋本格ミステリらしい」作品、ともいえる。現実にこの「ロジック」の量を長編としてまとめ上げるのは相当高度な技術だろうことは想像に難くない。 ...続きを見る

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2010/04/21 04:09
156 『盤上の敵』 北村薫
★★★★☆ 「作者の本気を見た」、などと書いたら失礼にあたるだろうが、そんな風に感じた作品。 北村薫の「得意」といえば、まず「人を描くこと」だろう。その幅は右に出るものがいないほど広い。美しく優しく細やかに真っ白く人の善性を描き、返す刀で深く鋭く粘っこく真っ黒に人の悪性を描く。前者は作者のあらゆるシリーズ・作品で十二分に描かれ、「北村らしさ」と認識されているとも思う。一方後者は常に「裏側」に隠れてきたが、鮮やかなイメージを残してもいる。例えば「本格ミステリ」ではない「時の3部作」やいくつかの... ...続きを見る

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2010/04/20 02:28
155 『冬のオペラ』 北村薫
★★★☆ 本作に登場するのは、北村らしくなく?正真正銘の純粋な「名探偵」、その名も、巫(かんなぎ)弓彦。彼がこの物語の中で課されている役割は、「謎を解くこと」だけである。他のシリーズの「浮世離れした」、と言えるような人物ではない。「名探偵」である以外の「現実的な生活」として、全く客のこない探偵事務所にいる以外は、近所で様々なバイトをしている位だ。こういう探偵も「ハードボイルド」というのだろうか、「感情的な面を排している」という意味ではその「資格」はあると思うのだが。 そして「記録者」は、名探... ...続きを見る

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2010/04/19 03:27
154 『覆面作家の夢の家』 北村薫
★★★☆ シリーズ最後の(現在のところ)、短編3本からなる作品集。 作者は「本格ミステリ」ではない作品も数多く書いており、そちらの方でもとても評価が高い。その「物語」の手腕を発揮しつつ、「本格ミステリ」を書いているのだから「面白い」のは当然だろう。 この設定とキャラクターを使えば、小ぶりの謎やトリックを考えるだけで、短編が1本で来てしまうのではないだろうか(とさえ感じさせる見事な創り、という意味)。それが本作で「活動停止」になってしまったのはもったいないと思うのだが。 色々なところで作者... ...続きを見る

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2010/04/18 03:06
153 『覆面作家の愛の歌』 北村薫
★★★☆ シリーズ第2の作品集、短編が2本と中編が1本。 短い作品にも、「本格ミステリ」に欠かせない物が詰まっている。魅力的なキャラクターは言うに及ばず、小さく、よく作り上げられたカラクリ仕掛けのような謎とトリック、作者の知識の豊富さがうかがえるガジェット・小道具、美しい舞台、短編でも垣間見えるテーマ、そしてそれらを表現する筆の力。 ...続きを見る

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2010/04/17 02:40
152 『覆面作家は二人いる』 北村薫
★★★★ これほど「易しい」、そして「優しい」、本格ミステリは他に無いだろう。 元々「本格ミステリ」というのは「とっつきにくい」ものだと思う、「本格ミステリ独特のルール」を理解し、それを受け容れた上で面白がれないと、「楽しさ」まで到達しない。しかし、このシリーズは、そういう「難しさ」というハードルを楽に越えさせてくれる。 ...続きを見る

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2010/04/16 04:49
151 『奇偶(上・下)』 山口雅也
★★★★☆ 前記作『暗黒館の殺人』が「本格ミステリの頂上」とするなら、本作は「本格ミステリの最下階」と言えるかもしれない、「本格ミステリ」と呼ばれる建物の地下一番深く、アンダーワールドの粋。しかし、「到達点」としてみるのなら、「海面からの距離」は「頂上」より遠いのかもしれない、地球において「最高峰」の高さが「大海溝」の深さに届かないように。 作者は「本格ミステリ的なもの」をことごとく疑ってかかり、それが「完成する前に」壊してしまう。それに用いられる「道具」は「数多の知識(物理学、数学、神学、... ...続きを見る

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2010/04/15 01:47
150 『暗黒館の殺人(一)〜(四)』 綾辻行人
★★★★★ 「新本格ミステリ」と呼ばれる作品の内で、「本格ミステリらしさ」が最も濃い作品だと考えている。 「本格ミステリ」というものに必要なものが全て、十分に揃っている。魅力的な(数々の)謎、トリック、底を流れるテーマ、個性的な登場人物と動機、見え隠れする伏線と重なる推理、魅惑的な舞台と小道具、陰で全てを司る構成、そして衝撃的な謎の解明とどんでん返し…。 それを「作者の技術の粋(≒新本格の技術の粋)」を駆使して描ききっている。この「描きかた」は作者がここまで積み上げてきたものの上にあるから... ...続きを見る

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2010/04/14 02:56
149 『どんどん橋、落ちた』 綾辻行人
★★★★☆ 「本格ミステリとはどういうものか」、という根源的普遍的な「壁」に作者がぶつかり、答えを出すことを迫られた時に書いた作品、というイメージ。発表は(表題作を除いて)98年末から99年である、ということもそんな印象を補強しているだろうか。第2話のラストに書かれている“これは袋小路への道標である”という、第1話に対してなされたコメントが非常に象徴的。 ...続きを見る

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2010/04/13 04:33
148 『最後の記憶』 綾辻行人
★★★★ 自分は「本格ミステリ」が好きだ、そして、この作品が「本格ミステリではない」とは思わない。だが、「だが」という書き出しになってしまう。(今回はマトモな感想になりそうもないな) 文庫版の解説が非常に面白かった、特に「ジャンルを分ける」「パターンに嵌める」「自分のファイルに入れる」ことの「空しさと愚かさ」については、思い当たる節がありすぎて苦笑いさせられた。まあ「本格ミステリ読者」は、或いは「本格ミステリ好き」は、そういう「性質」を持つからこそ「本格ミステリに惹かれる」という面があるのだ... ...続きを見る

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2010/04/12 04:06
146 『フリークス』 綾辻行人
★★★☆ 2編の短編と1中篇からなる「連作推理小説」、分類するなら「サイコミステリ」だろう。 2つの短編では作品自体にトリックが仕掛けられており、「本格らしい」驚きがある。だがしかしそれが明らかになっても物語は終わらない。その先にあるのは「サイコ=歪んだ心理」、ミステリ的なトリックは「メイン」ではない、その先にあるものために使われている「道具」。作者が物語を書く上でどちらが先にあったのかは分からないが、完成を見た作品においては「ミステリ」は「サイコ」の内側に包まれている。 ...続きを見る

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2010/04/10 03:18
145 『鳴風荘事件 殺人方程式U』 綾辻行人
★★★☆ 前作に続いて「オーソドックスな本格ミステリ」であり、使われているのは基本「物理トリック」。そして、9章と10章の間に「読者への挑戦状」が「謹んで」挿入されている。これも難易度は高いが、「フェア」そのもの。 今回は「ホワイダニット」、つまり「なぜ、死体の髪は切られ持ち去られたのか」という謎を解き、それを土台にしての「フーダニット」、「だとすればそれをが必要であったのは誰か」を解かなければならない。前者は閃きによって「当たる」かもしれないが、後者の謎は一筋縄ではいかない。そこまで「解決... ...続きを見る

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2010/04/09 01:56
144 『殺人方程式 切断された死体の問題』 綾辻行人
★★★★ このシリーズは著者にしては珍しい、「ごくオーソドックスな本格ミステリ」である。 正式な「読者への挑戦」はないが、文庫版では、あとがきで「300ページまでに"手掛かり"はすべて提出されている」とある(個人的には333ページ辺りまでのヒントがないとお手上げだった)。難易度は高いが「フェアさ」は保証する。探偵より早く謎解きにチャレンジするのもいいだろう。ただ、自分の感覚ではあまりにも「挑戦」に固執すると、最後に「素直に驚くこと」ができにくくなる感がある、が…。 ...続きを見る

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2010/04/08 03:20
143 『黄昏の囁き』 綾辻行人
★★★ 「サイコミステリ」ではあるが、この作品を創る時「最初にあった物」は、この「犯人の見せかた(トリック)」ではないか、と思う。「サイコ(心理)サスペンス」のつもりで読んでいくと、この「犯人」には驚かされるだろう。逆にいえば、この体裁であるからこそこのトリックが最大限に生きた、ともいえるし、逆にこれを「本格ミステリ」として読むと論理も伏線も足りていない。 ...続きを見る

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2010/04/07 02:23
142 『暗闇の囁き』 綾辻行人
★★★★☆ まず第一に「非常に作者らしい作品だ」と感じた。 例えば綾辻の作品を分類し、それぞれを平面上に点として表した時、それらの点の「中央」に一番近い位置に来るのはこの作品ではないか(「頻度」を度外視した場合に)。 この作品には、読者に向けられた大きなトリック、人間の記憶の不確かさ、「異常」ということの捉え方、そして「本格ミステリ」として必要不可欠な「謎」と「その解明、そして収束」、といった「これまで作者の描いてきたもの」が詰め込まれている。結果、それぞれが作品に占める割合・個々のボリュ... ...続きを見る

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2010/04/06 03:14
141 『緋色の囁き』 綾辻行人
★★★☆ 著者による「囁き」シリーズ第1弾。とはいえその3作に物理的な繋がりはない、1作だけ読んでも読む順番がバラバラでも問題はない。シリーズとしての共通点は他の作品より「サスペンス」の要素が強いこと、だろうか。 今作は、分類するなら「サイコサスペンス」とするのが一番しっくりくるような気がする、「本格ミステリ」的な要素は「犯人の意外性」くらい、かなり薄い。「本格である」という先入観を排して見れば、十分に意外でこの物語に相応しいと言えるだろうが、その「謎」も「解かれる」というより「顕わになる」... ...続きを見る

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2010/04/05 04:01
140 『六色金神殺人事件』 藤岡真
★★★★ 前記作が「謎の解決」の極致に挑戦した作品だとしたら、本作は「謎の魅力」の極致に挑戦した作品、といえるだろう。(もうひとつの「柱」である「推理の展開」の極致に挑戦した作品としては歌野・貫井・西澤などの諸作品が挙げられる) 舞台は「雪に閉ざされ陸の孤島となった小さな街で行われる、大規模な六色金神(りくしきこんじん)祭」、そしてそこで起こる「正に極め付きの不可能殺人の数々」、更に、そこにまつわる奇怪な古文書「六色金神伝記」…。これだけの「奇想」を終結させるには…。 ...続きを見る

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2010/04/04 02:47
139 『消失!』 中西智明
★★★★ 本格ミステリの「解決」の場面は、よく「崩壊」のカタルシス(抑圧からの解放・解消)に例えられる。 しかしこの作品の「解決」は、「崩壊」ではなく、正に「消失」。「どれだけ跡形もなく壊すか」ということは、本格ミステリの「本分」の大きなひとつであるが、それを極限まで突き詰めた形が、ここにある。 ...続きを見る

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2010/04/03 03:47
138 『被害者は誰?』 貫井徳郎
★★★ この著者による、「一番本格的な短編集」ではないか、と思う。(個人的には作者を初めて読んだ作品) 文章は常に「理」に適っており、「本格ミステリのコード」の内でありながら読みやすい。「謎」自体は大きくないが(短編なので)その「解決」は非常に美しい。 ...続きを見る

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2010/04/02 01:12
137 『プリズム』 貫井徳郎
★★★★ 「本格ミステリに拘泥する」自分としては感想が非常に難しい作家。そもそも「ジャンル」という枠に捉えることが難しい。(同じ理由で、宮部みゆきはほぼ全作、東野圭吾は本格的な作品はほとんど読んでいますがここにアップするのをとりあえず止めています) ...続きを見る

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2010/04/01 02:21
136 『慟哭』 貫井徳郎
★★★★☆ 個人的には、貫井徳郎は「本格ミステリ作家」ではない、と思っている(現在の活躍の場を見て、もあるが)。 本作は著者のデビュー作である。「紛うことなき本格ミステリらしい仕掛け」が施されており、「謎とその解明」や「伏線とその回収」、「ラストのカタルシス」、どれをとっても正しく「本格ミステリ」である。トリック自体はそこまで「独創的」ではないが、「本格ミステリ」の守るべき「コード」を守り、あくまで「フェア」であることに心を配り、最後におとずれる「カタルシス」が最大になるような構成を選んでい... ...続きを見る

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2010/03/31 04:44
135 『蛇遣い座の殺人』 司凍季
★★★★ 書き手の「らしさ」がとてもよく発揮された作品、と感じた。個人的にはこの作者のベスト。 初めに「難」をつける。探偵役ワトソン役の「立ち位置」「キャラクター」「役割」その辺がややスッキリしない。その辺りまで踏み込むなら、書き込みの分量が不足しているからか。 ...続きを見る

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2010/03/30 02:53
134 『首なし人魚伝説殺人事件』 司凍季
★★☆ 作者の「器用さ」が非常によく見える作品だが、それが逆にそこに描かれているものを形骸化してしまってもいるのではないか、とも思う。分類するなら「アリバイモノ」だろうか。 描かれている「本格」的なもの、例えば「トリック」「伏線とその回収」「物理的な説得力」「謎の収拾」など、それぞれはしっかりしているのだが、「そこが描きたい」というような良い意味での「執着」を感じない。それでもちゃんと描けているということ自体はすごいと思うが。 また、「テーマ」として出てくる社会派的な問題や作者なりの視点、... ...続きを見る

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2010/03/29 02:24
133 『さかさ髑髏は三度唄う』 司凍季
★★★☆ シリーズ探偵、一尺屋遥が登場する著者の長編第2作。 「物理トリックを利用した心理ミステリ」という感覚。目を惹くトリック(=驚きのポイント)はいくつもある、衆人監視下での殺人、古い伝説の再現、更に後半には…。だが、作者はそれをメインに持って来ていない、いわば「道具」として「謎とその解明」を使っている。それはつまり「本格ミステリ」であることに、そこまで重きをおいていない、という風にも感じられた。 中心に据えられるのはやはり人間、という印象。特に「動機」とその背景にかなりの筆を割いてお... ...続きを見る

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2010/03/28 01:59
132 『からくり人形は五度笑う』 司凍季
★★★ 横溝正史が好きな読者なら、ぜひ読んでほしい作家。デビュー作であり、シリーズ探偵が登場。 「本格ミステリ」であるが、その中にも「探偵小説」の雰囲気が濃く漂う。基本的には「物理トリック」を得意とするが、物語の中央にあるのは、例えるなら後期のクリスティのような「人物関係」であると思う。それにマッチした文章と、舞台設定・人物描写はこの作者「ならでは」だろう。それは一方で「ロジカルな文章にはなれない」という弱点ともなるのだが。 「不可能殺人」に使われたトリックは美しく小道具も活きているが、「... ...続きを見る

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2010/03/27 06:36
131 『壺中の天国』 倉知淳
★★★★ 一見、「電波系本格ミステリ」という感じで(そんなジャンルあるのか?)、どうも「らしくない」雰囲気だなぁ、という導入。しかし実際は倉知淳の土俵、知らないうちに手の内に引き込まれているだろう。 一般的なミステリの分類でいうなら、「ミッシングリンク」であり、「アームチェア」モノだろうか。そしてオープニングが「電波系怪文書」なのだから、「動機」が大きな謎となるのは至極当然だし、そこの点で「ああ、そうか!」という納得が難しいのも無理もない。 これだけの「縛り」を課された上で「本格ミステリ」... ...続きを見る

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2010/03/26 03:13
130 『猫丸先輩の空論』 倉知淳
★★★★ ますます完成度がましている、お馴染み「猫丸先輩シリーズ」の短編集。 それと同時に「謎」と「キャラクター」の比率が段々後者寄りになってきている感はある。それで十分以上に面白いし、気持ち良く読むにはプラスなのだけど。 ...続きを見る

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2010/03/25 03:33
129 『猫丸先輩の推測』 倉知淳
★★★★ 「日常の謎」の真っ直ぐ中央を行くような短編集。 「本格としての核」を絶対に守った「謎」を持ち(小粒ではあるが)、「それをめぐる人たち」が主役のストーリー。とにかく人物の描きかたが極めて巧い。「謎」と「キャラクター」のバランスとボリューム、過不足のなさ、計算づくで、書ききられている。 ...続きを見る

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2010/03/24 03:08
128 『星降り山荘の殺人』 倉知淳
★★★★ 「本格ミステリ」として、それを知り尽くしたマニアに向けて「読者への挑戦(そういう風には書いていないが)」をここまでやっている作品は他には無い。またもう一方で、ほとんど「本格ミステリ」を読んでいない読者に対して親切に、十分過ぎるヒントと書ける全ての伏線を書いた作品も他には無い。「本格ミステリのルール」を理解する教科書、と言える。 もしもあなたが「本格ミステリ」が好きで、この作品を未だ読んでおらず、「自分には名探偵の素質があるのでは」と頭の隅ででも思っているのなら、今すぐこの作品を読む... ...続きを見る

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2010/03/23 02:49
127 『幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイトノート』 倉知淳
★★★★ 倉知淳の作品を読んで、一番「他の人が真似できない」と思うポイントは、作者の「人というものの描きかた」ではないか、と思う。例えばこの猫丸先輩のシリーズの短編の登場人物で、一番「意地が悪い」のは先輩自身だろう。乱暴な言い方をすれば、この短編シリーズで作者は、「悪人」を登場させていないのではないか、と。 ...続きを見る

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2010/03/22 03:21
126 『過ぎ行く風は緑色』 倉知淳
★★★★★ 猫丸先輩が探偵役を務める現在のところ唯一の長編であり、個人的には作者最高の作品だと思っている。 提出される「謎」は珍しいものではない。魅力的なガジェットに彩られた密室殺人、ある特殊な状況で行われる不可能殺人、そして…。 ...続きを見る

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2010/03/21 02:33
125 『占い師はお昼寝中』 倉知淳
★★★★☆ これ以上ないくらい「日常の謎」を扱った短編集。 探偵役は主人公美衣子の叔父で「霊感占い師」の辰寅氏、しかしこの人、占いは自分で認める「インチキ」だし、探偵としても完全にやる気がない。そんなうらぶれたビルにある占い所に持ち込まれる「事件」ですからね…。事実、短編6本の内実際に「事件」といえるものが起きていると言い切れるのはひとつかふたつかしかない。 この特異で魅力的なキャラクターについては実際読んでもらうしかないのでこの辺で切り上げて。 ...続きを見る

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2010/03/20 02:34
124 『日曜の夜は出たくない』 倉知淳
★★★★ 恐ろしいまでの「凝りよう」、の作者デビュー作。掛け値ナシの「日常の謎」系の「本格ミステリ」。 探偵役はお馴染み(になる)、猫丸先輩。連作短編集であり、最後の最後の最後まで凝りに凝りまくって、もはや「嫌がらせ」のように「謎の解明」を詰め込んでくる。同じ創元推理デビューの若竹七海『ぼくのミステリな日常』の凝りようも半端ではなかったが、今作はそれすらひと回りふた回り上回っている。 特に一番最後に隠された「作者の意図」は、正しく「本格ミステリそのもの」の仕掛けであり、これだけで長編が書け... ...続きを見る

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2010/03/19 04:11
123 『クール・キャンデー』 若竹七海
★★★☆ まず感じるのは「文章の軽さ」だろうか。だが油断していると見事に滑ってひっくり返ることになる。それはそれは、「バナナの皮で滑ってひっくり返るように」見事に…。 この分量で「本格」であるのだからやはりネタに触れないで書くことは難しいか…。ホンの30分で読めますので未読の方は読んでから。多少のネタバレは覚悟の方のみ続きをどうぞ。 ...続きを見る

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2010/03/18 02:13
122 『八月の降霊会』 若竹七海
★★★☆  作者の「本格ミステリ観」といったものがあらわれた作品だと思う。 そのあたりを考えての感想。やや踏み込んだ内容になっているのでネタバレ完全拒否の方はUターンを。 ...続きを見る

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2010/03/17 02:19
121 『製造迷夢』 若竹七海
★★★☆ あまり有名ではないし、代表作でもないし、「作者らしさ」という点でも「真ん中」ではないのだが、個人的に好きな作品。かなり初期の作であり、道具立てとしては「ミステリ」+「超能力」。 主人公は、「サイコメトリスト(物に触ることでその持ち主の情報を読み取る能力者)」である井伏美潮と、刑事である一条風太。このコンビで事件を解決していく連作短編形式。この形式は作者のお得意。 ...続きを見る

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2010/03/16 02:51
120 『スクランブル』 若竹七海
★★★ 分類するなら「青春ミステリ」。そして「青春3:1ミステリ」というような割合。 「謎とその解明」はバラバラに、6人の主人公の「回想」という形で描かれ、ひとつの形を成していく。 ありがちに、ジグソーパズルのピースに例えるなら、その創造主が描きたかったのは「その風景」であって、パズルが完成した時に見える「真相」がメインではないだろう。描かれた風景は大きく6つに分けられ、それぞれに独自の色を持つ。それらは最終的にひとつの風景として額に収まり、「結果として」それが集まる中心に「真相」或いは「... ...続きを見る

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2010/03/15 03:40
119 『サンタクロースのせいにしよう』 若竹七海
★★★ この著者にしては比較的スッキリと収まりのいい、連作短編の「日常の謎モノ」といって差し支えないのだが。 著者本人は「謎を書くこと」より「人を書くこと」に興味があるのだろうな、というのがよく見える作品である。言い替えれば、「本格ミステリ」であることに対してもあまりこだわりがないのだろうな、という様に見える。 それをいちばん感じるのは、「それでも後味が良くない」ということ。「本格ミステリ」であろう、とする作者の場合、「謎の解明」の後には何も残したくないだろう。その方が解明自体も美しく出来... ...続きを見る

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2010/03/14 03:13
118 『悪いうさぎ』 若竹七海
★★★ 「リアリティがある」というのは、「本格ミステリ」に対して誉め言葉になるのだろうか。「リアリティがない」とけなされるのは珍しくないが。個人的には「ミステリ」に対しては賞賛の言葉になる、と思うのだが…。 (この辺りは各々の「ミステリ」に対する考え方によるだろう) ...続きを見る

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2010/03/13 02:55
117 『依頼人は死んだ』 若竹七海
★★★ 「女性探偵・葉村晶シリーズ第2作」であり、9作からなる連作短編集。 それぞれの事件自体はそれ程大きくもないし、そこに使われるトリックも大きくはない。しかし物語は、ハードボイルドな主人公に相応しく、「重い」。そして主人公はその「重い」事件の中にどっぷりとはまり込み、あまつさえステージの中心に引っ張り出される。探偵自身がすべての短編を貫く「中心」に置かれるのだ。過酷である。 ...続きを見る

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2010/03/12 02:52
116 『プレゼント』 若竹七海
★★★☆ 「女性探偵・葉村晶シリーズ第1作」であり、8編からなる短編集。とはいっても主人公はこの作品の途中までは「探偵」ではないし、2・4・6作目の「探偵役」は小林警部補である。最後の8編目で葉村晶と小林警部補が出会う、という構成になっている。 その後の作品に比べると、物語の中心がトリックに寄っており「本格ミステリ」の割合が高い。しかし後半になるほど主人公が事件に「ハマって」いき、比例するように「人間や気持ち」の比重が高まっていく。探偵としての事件との向き合いかたとしては、「引き込まれて行く... ...続きを見る

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2010/03/11 01:55
115 『心の中の冷たい何か』 若竹七海
★★★☆ 作者と同名の「女探偵」が(前作の「続編」と考えていいのだろうか、タッチがかなり違うが)、旅先で知り合った後自殺未遂を図った女性から受け取った手記の謎を解くために、その中に「自ら喰い込んでいく」という印象の「ハードボイルドミステリ」だろうか。 「本格ミステリ」としての仕掛けもいくつか施してあるが、そこはメインではないだろう。 ストーリーの柱は「自ら進んで真相に向かって突き進んで行く強烈な当事者性」というようなもの。自分の介入が事件や周囲の人物に与える影響など意に介さず(探偵法月綸太... ...続きを見る

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2010/03/10 02:38
114 『ぼくのミステリな日常』 若竹七海
★★★★ 「見事な細工物が12、それが一揃い並ぶとまた違う意匠」という第一印象。 作者のデビュー作であり、体裁としては「連作短編集」。この呼び方がこれほど相応しい作品もそうあるものではないだろうと思う。また、「日常の謎モノ」でもある。 まず、個々の短編の「謎と解決」がそれぞれ見事に決まり、美しい。そしてそれをすべて抱合する形で、最後に明らかになる「謎と解決」は、「感嘆した」という他ない。これから読む方には、ぜひ「連作短編集」であることを意識しながら読んでみてほしい。自分の中の「推理」が、読... ...続きを見る

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2010/03/09 02:28
113 『木製の王子』 麻耶雄嵩
★★★☆ 著者の作品にしては(『あいにくの雨で』と並んで)、おとなしく、地味な印象だが、やはりその分著者の「地」が見える作品だと感じる。 ジャンルとしてはある程度「クローズド・サークルモノ」であり、「アリバイモノ」であり「一族モノ」であり…。 作者の長編で、ここまでロジックに偏った作品は無いのではないかと思う。人物は極めてデジタルに動き、その「当然の帰結」として次々と死んで行く。他にも、アリバイトリックも完全に「パズル」であること、「推理合戦」があること等、様々な趣向を凝らし、わざと過剰さ... ...続きを見る

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2010/03/08 04:46
112 『メルカトルと美袋のための殺人』 麻耶雄嵩
★★★★☆ 作者デビュー作で「最後の事件」に巻き込まれる「銘探偵メルカトル鮎」の、つまり前日談ということだろう。前代未聞・驚天動地・極悪非道の短編が並ぶ。 こんなに「ひどい」短編集は見たことがない、1作読み終わるごとに「ひどい!」と唸った。「出来が悪い」という意味ではない、決して。それぞれの短編は徹底的といえるほどロジカルで、「本格ミステリ」以外のなにものでもないし、このうちの何作かは個人的な「短編ベスト」の10本の指に入ると思っている。 ...続きを見る

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2010/03/07 00:52
111 『あいにくの雨で』 麻耶雄嵩
★★★★ 前作『痾』とまさに兄弟のような関係にある作品、主人公は如月烏有の弟、如月烏兎である。 きっと作者の他の作品に比べると、かなり「おとなしい」という第一印象を受けるだろうと思う。あらゆる意味での「異常な過剰さ」は見えず、それ程大きくない舞台と、それ程怪奇でない事件と、それ程突飛でない設定。更に「青春ミステリ」という分類も可能なストーリー(そこはそれ、過剰にひねくれゆがんだ「青春」だが)。 だが。だがである。そのような物語でこそ、作者の「真価」というか、「特殊性」というか、「その特長」... ...続きを見る

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2010/03/06 02:37
110 『痾』 麻耶雄嵩
★★★★ 主人公は前作と同じく如月烏有であるが、「あの大事件」の記憶を失っている。それもあり「続編であるのか」、という点については「そうである」とも「そうとはいえない」ともいえる。この時点で「問題作」としても「資格」は十分過ぎるほど持っているのは分かるというものだ。 「本格ミステリ」に限らないが、ミステリーというジャンルは「人の生死を軽々しく扱う」という批判を受けることがある。逆に「本格ミステリは人の死に徹底的に拘ることでそれに意味を与える」などという人もいる。(本格が大きな戦争の後に隆盛を... ...続きを見る

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2010/03/05 04:27
109 『夏と冬の奏鳴曲』 麻耶雄嵩
★★★★ 「問題作だらけ」の麻耶作品の中でも、「ナンバーワンの問題作」といえる作品。 本作で作者が行った「破壊」は、単純に「破る」ということに尽きると思う。「本格ミステリ」であるために必要である(と、読者が無意識レベルで前提としている=「本格」の世界を構築するに不可欠であるハズの…)あらゆる、ルール・コード・常識・土台…どんな呼び方をしてもいいが、それが次々と「破られて」ゆく。文字通り「次々と」である(自分は最低でも4度は「なんだこれは?」と天を仰いだ)。そして「本格ミステリとは何か」なんて... ...続きを見る

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2010/03/04 01:28
108 『翼ある闇−メルカトル鮎最後の事件−』 麻耶雄嵩
★★★★★ この著者の作品については、押し並べてあまり書きたくないです。いきなりこの「ブログ自体」を否定するような感想だが、本心である。それはおそらく、この作者が「各作品を目一杯使ってやろうとしていること」がいわゆる「本格ミステリ」の枠に収まらない、イコールその枠の中での感想を書いても意味がないからであり、「本格」をもっと引いた位置から、マクロに見なければ「感想」も書けないからであり、その視点をキープする事に自信がないから、だろう。 ...続きを見る

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2010/03/03 03:09
107 『赤死病の館の殺人』 芦辺拓
★★★☆ 表題の中篇1作と、短編3作からなる、「森江春策シリーズ」の中短編集。 それぞれが、「本格ミステリ」としての「トリック」や「テーマ」有名作品・作者への「オマージュ」などを取り込みつつ、それぞれ非常に個性的であり、破壊力がある。 中では「疾駆するジョーカー」が印象に残った。この作品の中の「謎」は、「物語」の助手である、シンプルで美しいがメインではない。だがそれが見事に決まっている。逆に言えば、この「謎」を生かすにはこの「物語」が必要不可欠、という感。 作者は、「本格ミステリ的なガジ... ...続きを見る

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2010/03/02 02:19
106 『和時計の館の殺人』 芦辺拓
★★★ これも森江春策シリーズ。台風や崖崩れで孤立はしないし、規模はそれほど大きくないが、「館モノ」でもある。オープニングの雰囲気や舞台設定は、金田一耕介が現れてもおかしくない風情。「和時計の館」だけに時計が使われたトリック。そこのひとひねりのアイディアは美しいし論理的である、のだが、「本格」としては物足りない。個人的にはこの作品は「探偵モノ」という括りに入ると思う。「本格」とどう違うのか?と聞かれると難しいのだが、今作では「落差」へのこだわりが足りない、という感じ。「探偵モノ」は「推理」とい... ...続きを見る

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2010/03/01 02:56
105 『不思議の国のアリバイ』 芦辺拓
★★★☆ 森江春策シリーズであり、舞台は作者得意の「映画界」、分類するなら「アリバイモノ」だろう。しかしジャンルとしてアリバイが苦手であっても面白く読めると思う。ロジックの積み上げが美しい。 自分がこの著者の作品では一番最初に読んだ作品でもある。著者の得意な舞台ということもあり、「本格」としての要素とのバランスはなかなか良いと思う。「トリック」の一撃も非凡なものでありかなりハイレベル。 それ程長くも、大きくもない作品だが、文章の中にある気配りや、ラストの閉じかたにも好感が持てる。あまり「大... ...続きを見る

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2010/02/28 00:49
103 『殺人喜劇のモダン・シティ』 芦辺拓
★★★ 「殺人喜劇」のタイトルがついてはいるが、シリーズに含まれる作品ではない。 「本格ミステリ」に様々な「ふろく」がついた作品、という感じ。例えば「時代モノ」「サスペンス」「冒険モノ」といったジャンルを含み、「映画」や「思想」といった小道具も使われている。 しかし様々なものを詰め込みすぎた結果、「つなぎ」であり「メイン」である「本格」としてのまとまりに書ける、という言い方もできるように感じる。なんだか具を入れすぎてバラバラになってしまったお好み焼き、というか。「密室」に「時刻表」に「遠隔... ...続きを見る

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2010/02/26 02:13
102 『殺人喜劇の13人』 芦辺拓
★★★☆ 作者のデビュー作であり、「森江春策」シリーズの長編第1作(作中の時系列的には2作目、また短編も含めた全作品中でも2作目)。森江春策の大学時代の「寮」といえるようなアパートで起こる連続殺人。 非常にボリュームにあふれ、カロリーが高く、インパクトが強い、という印象。これほど濃度を持ったままこのページ数を突っ走るのは「異常」とも思えるくらい。無茶ではないかという程の事件の重なりと伏線、無理に近い人間関係の錯綜、無駄とすら感じる細かい謎の数々と推理合戦、無謀とも取れるキャラの設定とストーリ... ...続きを見る

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2010/02/25 01:28
101 『十三番目の陪審員』 芦辺拓
★★★★☆ 著者としては第8長編、デビューから9年目の作品であり、出版は98年。 到叙小説のような書き出し、主人公が「犯罪計画」に参加する過程からストーリーは始まる。しかし、その「計画」は実際に行う為のものではない。それは、「起こっていない犯罪によって、殺人犯として逮捕され、その上で冤罪を証明するという計画」という類を見ないものである。そしてそこに関わる「DNA鑑定」の落とし穴、更に隠された目的。そしてその「元」にあるのがタイトルにもある「陪審員」という制度である。くしくも非常にタイムリーな... ...続きを見る

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2010/02/24 03:47
100 『悪霊の館』 二階堂黎人
★★★☆ (この作者はそれしか読んでいないのだが)「二階堂蘭子シリーズ」の長編4作目。 様々な「本格ミステリ」の「極」近くにある要素を「新本格」にありったけ取り込んだ、という印象だろうか。 それは「散乱している」とか「過剰だ」とか「贅沢極まる」とか、色々な角度から評価が出来るだろうが。 例えるなら、乱歩の「冒険・怪奇」、横溝らしい「血縁と財産」、鮎川の「警察モノ」のような地道な捜査等々…。更に作者の得意分野である、「宗教」や「歴史」を加え、まさにストーリーは「壮大」のひと言。 (本作で... ...続きを見る

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2010/02/13 03:24
099 『バラ迷宮』 二階堂黎人
★★★★ 6篇からなる短編集で、「二階堂蘭子シリーズ」である、「表題作」といえるラストの作品は90ページとやや長い。個人的には、この著者は「短編」では十分に力を発揮しづらい作風ではないか、と思う。 「短編」ではより「トリック」の比重が大きくなる。二階堂の「トリック」は、「物語」や「動機」と密接に関係していることが多く、またそこが作品の魅力の「核」になることが多い。だが短編ではその「核」を書ききることは難しいのではないか。 中から何作か。 一番好みだったのは「ある蒐集家の死」だろうか。分類... ...続きを見る

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2010/02/12 02:56
098 『吸血の家』 二階堂黎人
★★★★☆ お、今度は横溝風か?、という感じの「二階堂蘭子シリーズ」長編第3作。横溝正史好きなら読んで損はない。事件の舞台が日本的な旧家屋であったり、事件の主人公がそこに住む美しい姉妹であったり、そこで用いられる凶器が「刀」であったり、竹薮での追跡劇があったり…。 ...続きを見る

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2010/02/11 04:34
097 『ユリ迷宮』 二階堂黎人
★★★☆ 「二階堂蘭子シリーズ」の短編集、というか短編2作と中篇1作だろうか。 1作目「ロシア館の謎」、良作だと思う。非常に難しいであろう「建物の消失モノ」であるが、短編ならではの語りの軽さ、構成のストレートさを伴うことでトリックと物語が高いレベルで両立されていると感じた。 2作目は「密室のユリ」、物理トリックと心理トリックが融合している。作者のトリックとしては分かりやすかった。(ほとんどトリックを見破った試しがない自分が見破ったのだから) 3作目は中編「劇薬」、タイトル通り「毒殺モノ」... ...続きを見る

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2010/02/10 02:29
096 『聖アウスラ修道院の惨劇』 二階堂黎人
★★★☆ 「二階堂蘭子シリーズ」第2作(時系列的には何番目になるのだろう?)。 修道院の塔で起こった2つの密室殺人、桜の木に逆さづりにされた首無し死体、その後も修道院内で起こり続ける殺人事件…、「本格ミステリ」の「道具」がこれでもかと散りばめられた作品。 この作者の特長であるが、ひとつめは乱歩的な「冒険」や「怪奇」が他の作者以上に取り入れられていること。ふたつめは事件の裏側にある「テーマ」との明確で核心的なつながり、だろうか。 (自分としては1作目より、いうなれば「乱歩色」が強く感じ評価... ...続きを見る

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2010/02/09 02:27
095 『地獄の奇術師』 二階堂黎人
★★★★ 作家、二階堂黎人のデビュー作であり、「探偵二階堂蘭子シリーズ」の最初の長編である。 まずは「古色ゆかしい」という形容が良く似合う、江戸川乱歩のような世界観。特に前半の「探偵小説のような」或いは、「冒険小説のような」展開は、昭和42年という舞台設定とも相まって独特の雰囲気を持っている。 事件の舞台は「十字架屋敷」と呼ばれる邸宅、犯人は「地獄の奇術師」と名乗り一族皆殺しを予告する顔を包帯で隠した男、そこに巻き込まれるのは女子高生探偵二階堂蘭子(その形容は実際読んで貰わないと)、「読み... ...続きを見る

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2010/02/08 04:52
094 『麦酒の家の冒険』 西澤保彦
★★★ 著者が、「本格ミステリの限界」に挑んだ作品、だろうか。ほぼ全編が「推理」のみでありながら長編。 あとがきにも述べられているように、「アームチェアディテクティヴ」であり、「匠千暁シリーズ」でもある。 ...続きを見る

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2010/02/07 06:50
093 『人格転移の殺人』 西澤保彦
★★★★ 主人公の苫江利夫は、あるハンバーガーショップで大地震に見舞われる。そこにいた6人は建物内にあったシェルターに避難するが、そこで「人格転移を起こす」という装置に入ってしまう。その人格の移動(マスカレード)は、順番こそ決まっているが、そのタイミングは分からない。そんな状況で助け出された6人は、秘密施設に隔離される。だが、そこで殺人事件が起こってしまう。 「誰の心が誰の体を使って殺人を犯したか」、そして「誰の心or誰の体を狙って殺人を犯したか」それを解明する推理が始まる。それにしても、作... ...続きを見る

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2010/02/06 02:37
092 『殺意の集う夜』 西澤保彦
★★★★ 「SFミステリ」ではないのだが、この物語の冒頭は例えば『完全無欠の名探偵』より余程「ありえない」設定ではないか。ので、その設定から。 主人公の六人部万理は、友人の四月園子とともに、ひょんなことから嵐の山荘に足止めを食ってしまう。そこに集まって来るのは見るからに怪しげな人物。そして連続殺人、犯人は、主人公である。それもちょっとした拍子に、たまたま、勢い余って、出会い頭に、事故みたいなことで、不可抗力で、6人を。 しかし、園子の部屋へ行くと、彼女も殺されていた。これに関しては主人公は... ...続きを見る

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2010/02/05 02:30
091 『七回死んだ男』 西澤保彦
★★★★ 作者得意の「SF本格ミステリ」の或いは作者自身の「出世作」となった作品、といえよう。 「SF本格ミステリ」では設定を説明しなければ面白味も書けないので、簡単に。 主人公の大場久太郎(高校生)は、「同じ日を9回繰り返す」という「体質」を持っている。日付だけでなく他の人間の行動すべてが昨日と全く同じ日を生きる×8、というような。そしてそれ(「反復落とし穴」と呼ぶ)が起こるタイミングは制御も予知もできない。さて、そんな「体質」を持っていたらあなたならどうするだろうか。そんなことを考えつ... ...続きを見る

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2010/02/04 02:58
090 『解体諸因』 西澤保彦
★★★☆ 「本格原理主義者」、という肩書きを初めに付せられたのは北村薫らしいが(『覆面作家は二人いる』解説:宮部みゆき)、個人的には西澤保彦もこの「称号」に相応しいと思う。正し、西澤は北村よりよほど「武闘派」である。「本格であること」を貫くためには何でもやる(無論、作品の中で)、という印象。 ...続きを見る

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2010/02/03 01:51
089 『金雀枝荘の殺人』 今邑彩
★★★☆ 「本格ミステリの秀作と書くのにピッタリの作品」、という感じ。 その論理、人物の書き方、道具立て、トリック、動機、すべてにおいて「本格ミステリ」のありかたに忠実に描かれている。特に「論理性」については非常に明快、ストレートな構成も相まってとても「スッキリした」読後感を味わった。「美しい」という形容が似合うと思う。 思い出したのはクリスティ、『スタイルズ荘の怪事件』、「本格ミステリ」を読み始めるにはもってこいの作品、という印象。(ちなみにタイトルは「えにしだそう」と読む) ...続きを見る

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2010/02/02 02:15
088 『ブラディ・ローズ』 今邑彩
★★★☆ 著者2作目の長編、舞台や道具立て、物語の進行等は心理サスペンス。しかしその一方で、確実に十分に「本格ミステリ」である。その「本格ミステリ」らしいメイントリックは魅力的だったし、ラストも好み。 だが個人的には、展開がサスペンスタッチに偏りすぎと感じた。事件と謎の多くが「心理」の中のものである割には、その流れに取り込む魅力に欠ける。物語の中の「論理」に個人的なものが入り込む余地はないが、「心理」は「共感してもらう」ことが必要とされる。 そういう意味では、自分は、この作品の登場人物達に... ...続きを見る

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2010/02/01 03:00
087 『卍の殺人』 今邑彩
★★★★☆  作者のデビュー作であり、非常に「本格ミステリ色」の強い作品。 舞台はタイトル通り「卍」の形をした屋敷、そこに住む奇妙な関係の2つの家族、そこで起こる連続殺人。 素晴らしくオーソドックスであり、本格としてシンプルであり、そのまとまりは完全といっても過言ではない。全体を包む大きなトリックに、密室トリック、その他細かな「本格らしい」トリックと、それぞれ十分な伏線。 しかし、この作品は「謎」−「論理」−「解明」というがっしりとした「骨」と、これも「本格」的な、人物・舞台・背景・心理... ...続きを見る

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2010/01/31 03:10
086 『鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ』 折原一
★★★ 前記作と、姉妹編ともいえる樹海を舞台にしたストーリー。 感想についてもやはり同じく「整理しきれない」、続けて読んで自分の頭の出来に大きな不安を覚えた。 樹海、連続殺人、記憶、手記、謎と真相、主観、過去と現在…、折原のエッセンスが散りばめられている。 ...続きを見る

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2010/01/30 02:58
085 『樹海伝説 騙しの森へ』 折原一
★★★ 祥伝社文庫による「中篇書き下ろし」企画の枠で出された作品。 個人的にはこの「中篇という長さでくくる」という試みは面白いと思った。他の作者の作品でも、いつもと違うテイストのものが多かった気がする。 作品自体については、具体的に言及できるところがほとんどない。 自分には一読では「理解しきれない」部分がかなり多かったし、読み返してもしっかり整理しきれていない。 折原一が好きなら十分「らしさ」を堪能できるだろう。ミステリ初心者向きの作品ではない。 ...続きを見る

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2010/01/30 02:56
084 『模倣密室』 折原一
★★★☆ 黒星警部シリーズの短編集。それも密室が7つ、第1作と比べるとまた面白いだろう。 ちなみに警部はそのキャラクターのせいか、「どこでどんな事件に巻き込まれても違和感ナシな探偵役bP」と言うようなポジションを(自分の中では)獲得している。 短編の中からいくつか。なお、作者は短編であろうとも「叙述」を使う、注意は怠らずに。 「交換密室」、その名の通り「交換殺人」と「密室」のストーリー。交換殺人を「先にやられてしまった」人間の描写が真にせまっていると思う。もう一方の「密室」にも十分な理由... ...続きを見る

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2010/01/29 05:33
083 『丹波家の殺人』 折原一
★★★★ 黒星警部シリーズであり、助手役(?)は竹内刑事。 事件は基本的に「密室」で統一され、ボリュームも十分、解決もしっかり描ききっている。 舞台は建設会社会長の邸宅、会長自信はヨットで遭難し、生死不明である。そこで起きるのは当然「相続問題」。かくして連続殺人と、血の繋がったもの同志の疑心暗鬼が始まる。 前作までは作者の「手際」をメインに作品が続けてかかれていた気がするが、今作では「密室」に「謎」を絞り、その解決も見事。作者が「密室モノ」でやりたかったことが形になった作品ではないか。 ... ...続きを見る

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2010/01/28 03:54
082 『黄色館の殺人』 折原一
★★☆ 黒星警部シリーズであり、助手役(?)は葉山虹子。タイトルから連想される古典のパロディであり(原作の面影は…)、俗にいう「吹雪の山荘モノ」でもある。更に「黄金仮面」を狙う窃盗団、密室殺人に死体消失、恐ろしく盛り沢山である。 しかし、「謎」と「その解明」において目新しいもの、うなるような点はあまりなかった。 舞台となる「黄色館」は、背景や人物・設定に至るまで、「材料の質がどうも…」という感じ。それでは「館」を建てても書割・舞台小道具のような印象になる。それに加えて「本格」としての「骨格... ...続きを見る

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2010/01/27 02:20
081 『望湖荘の殺人』 折原一
★★☆ 「孤立した山荘」に台風が直撃、停電、集まっているのは因縁渦巻く人間達、そして始まる連続殺人。「よくあるパターン」といってしまえばそれまでだが、この作者のこと、当然そう簡単ではないし、そのどんでん返しへの凝りようは作者らしさとはいえ想像以上。 しかし、今作ではそれが「裏目に出た」ような感が、個人的にはある。 「本格ミステリ」より「サスペンス」の味が強い。「謎」という意味では「誰が?」だろうが、そこには焦点が絞りきれず、「動機」に寄りかかっている、ように見える。また、どんでん返しも何重... ...続きを見る

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2010/01/27 02:17
080 『蜃気楼の殺人』 折原一
★★★★ 「トラベルミステリ」のようなパッケージだが、「叙述ミステリ」である。そして折原の作の中でも「凝り具合」ではかなりディープな部類ではないだろうか。「叙述」が人間関係に入り込むと、もはやどうあがいてもすべての「謎」を見極めることは不可能。「騙されよう」と思って読むならもってこい。 ...続きを見る

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2010/01/26 02:44
079 『猿島館の殺人』 折原一
★★☆ 黒星警部と葉山虹子シリーズであり、東京湾の孤島という「クローズド・サークル」であり、第一の事件は「密室」である。が、この作品を端的に表すなら「パロディ本格」だろう。 「どんでん返しの量」でいうならこの作者の「本格」でも1,2を争うのではないか。実際のところ、自分自身読み終わって「事実」がどうであったのか、すべてが頭の中で整理されているとはいえないのだが。 この作品には「本格ミステリ」に不可欠であろう「材料」の内、かなりの部分が入っていない。それでいて作品が成立しているのは「叙述」の... ...続きを見る

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2010/01/25 04:56
078 『「白鳥」の殺人』 折原一
★★★ 分類するなら「時刻表トリックモノ」だろうか。他にもいくつか「本格ミステリ」らしいひそみが待っている。 しかし、「サスペンス色」が強すぎる気がする。「探偵」が素人であることが大きく影響しているのだが、探偵側の無知・無謀・無力が事件をひっぱりストーリーを織り上げていく、というありがちな形になってしまっているような気がする。「本格」としての「骨」であるメイントリックの割合がちょっと薄すぎる感。 思わせぶり、意味ありげなプロローグとその「解明」の見事な反転は美しい。 ...続きを見る

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2010/01/25 04:51
077 『鬼面村の殺人』 折原一
★★★☆ 黒星警部シリーズの長編第1作であり、コンビを組む葉山虹子の初登場作品でもある。 メインの「謎」は「建物の消失」、消え去るのは合掌造りの5階建である。同工の作品はあるものの、かなり難しいトリックなのは確実だろう。更に「密室」も登場、「本格ミステリ」として十分過ぎる道具立て。 …のハズなのだが、このシリーズ「とはいえ」その展開はふざけ過ぎとも取れるコミカルタッチであり、「本格」を読もうとこの作品を手に取った人間には違和感が強いだろう。 しかし、そこはこの作者のこと、単なる「コメディ... ...続きを見る

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2010/01/24 02:27
076 『七つの棺』 折原一
★★★☆ いうまでもなくカーの『三つの棺』のもじりであり、「七つ」の密室殺人を扱った短編集である。 また、作者のシリーズキャラである、黒星光警部が登場する第1作でもある。 作者の「本線」ともいえる叙述トリックは基本的になく、また黒星警部シリーズでもそれほど「ドタバタ」にはしっていない作品もあり、いわゆる「本格ミステリ」に近い短編集ではないだろうか。 ...続きを見る

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2010/01/23 06:22
075 『ファンレター』 折原一
★★★ 「叙述モノ」の連作短編集。作者得意の「記述者(視点)の変更による錯誤」を120%使った怪作。 短編それぞれには、叙述だけでなく「本格」ではおなじみの「人物の錯誤」や「密室」「記憶喪失」などが盛り込まれ、一文たりとも気を抜けない濃度。更に、全編が北村薫「らしき」人物のパロディになっているという凝りよう。 ...続きを見る

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2010/01/22 03:36
074 『倒錯の帰結』 折原一
★★★☆ そして「倒錯」シリーズ、第3部、とりあえず完結編、である。 前2作の登場人物・舞台、そして背景雰囲気テーマ……重なり繋がる点が多い。読むならまとめて読むべきか。まず本の構成自体が尋常ではない、表からも裏からも読めるのだ。表紙をめくると「首吊り島」という、密室モノ本格が始まる。なかなか冴えたトリックであるが、真相はまだ明らかにされないまま。次に本を天地ひっくり返して(自分が持っているのは文庫版)、裏表紙をめくると「監禁者」という、作者の本分、叙述&サイコミステリが始まる。そして、ふた... ...続きを見る

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2010/01/21 02:49
073 『倒錯の死角(アングル)』 折原一
★★★ 「叙述ミステリ」と「本格ミステリ」のジャンル的な関係性、について個人的に思うことを。 古典的・一般的な「本格ミステリ」では「謎」は「崩壊」する。組み上げられた構築物としての「謎」は、探偵の「一撃」によって崩壊に至る。その「一撃」の威力と、崩壊の規模・美しさが、カタルシスの大きさと質を決める。 一方「叙述ミステリ」では、「謎」は「反転」する。組み上げられた構築物としての「謎」は、「視点の移動」により全く違う「形」を見せる。それによる「驚き」は種類が違うものである。 ...続きを見る

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2010/01/20 02:20
072 『倒錯のロンド』 折原一
★★★☆ 正直いって、「叙述もの」は得意でない。ただただ感嘆しつつ読み終え、それでも「真相」があやふやだったり、自分の中でしっかり形をなさなかったりすることもある。が、「驚き」という意味では別のジャンルでは味わえないものである。 作者の「実質的」デビュー作。(「便宜的」デビュー作は短編集『五つの棺』のち『七つの棺』に改装・改題) 文学賞の話などは、得手ではないので避けてきたが、この作品は「1988年江戸川乱歩賞・最終候補作」である。そして、物語の主役もこの賞に応募しようとしている作家であり... ...続きを見る

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2010/01/19 19:20
071 『パズル崩壊』 法月綸太郎
★★★☆ 「探偵法月」の登場しない短編集。時期としては『冒険』と『新冒険』の間に出版されている。 個人的には非常に「くすんだ」印象の短編が多い。作者の創作に対する「悩み」が文章全体にあらわれているような「重さ」と「暗さ」を感じる。あとがきを読んで思ったのは「悩む」ことの対象にまだ形がないまま、しかし「悩む」ことに呑み込まれつつある、そんな中で書かれた作品というイメージ。 中から何篇か。 「懐中電灯」、地味だがロジックメインの非常に巧緻な作品。こういうタイプの作品は、単純に「好み」である。... ...続きを見る

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2010/01/18 02:50
070 『法月綸太郎の功績』 法月綸太郎
★★★★ やはり少し長めの短編が5作。「粒ぞろい」という意味でこの作者の最高峰。 「イコールYの悲劇」、ダイイングメッセージ。それほど長くない作品の中で可能な限りの「裏切り」が詰め込まれている。「そんなことあるかよ」と突っ込むにはうってつけ、という感があるが「面白い」から構わないのだ。 「中国蝸牛の謎」、密室モノ。これはある意味での「メタ本格」ではないかと思う。この「プロット」が「トリック」を成立させるために不可欠である、から。 「都市伝説パズル」、純粋ロジック。無茶苦茶好み。極めて限定... ...続きを見る

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2010/01/17 03:57
069 『法月綸太郎の新冒険』 法月綸太郎
★★★☆ 「短編」と呼ぶにはやや長い作品が5作と、「イントロダクション」からなる短編集。 「イントロダクション」と2編目・最後の作品が「図書館シリーズ」である。が、直接的に殺人事件を扱っており、前作のような「日常の謎」感は薄れている。 中で印象の強いものから。 「背信の交点」、ジャンルとしては「鉄道モノ」ともいえる、他にもひそみがあるので鉄道モノが苦手であっても面白く読めると思う。非常に手さばきの見事なトリック。残念なのは図書館シリーズ的な「空気」がロジックの堅固さとマッチしきれず、やや... ...続きを見る

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2010/01/16 01:50
068 『法月綸太郎の冒険』 法月綸太郎
★★★☆ 「探偵法月」シリーズの短編集第一弾。バラエティに富んだ作品集、だろうか。 白眉はなんといっても「死刑囚パズル」だろう、作者の短編の中でも1,2を争う傑作だと思う。 「死刑になる寸前の男が殺される」という魅惑的な謎(有栖川に似たものがある)、そこから始まる一分の隙もない論理の展開、出された結論の衝撃と「本格ミステリ」としての完璧さ…。タイトル通り「パズル」としての出来栄えはうなるのみ。「新本格ミステリ」として著された短編の内でも屈指のものではないか。 後半の4作は作者が「図書館シ... ...続きを見る

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2010/01/15 01:49
067 『頼子のために』 法月綸太郎
★★★☆ 法月の作品は「本格探偵小説」と呼ぶのが相応しいのでは、と個人的には思う。 「本格ミステリ」と「本格探偵」の大きな違いは、「謎とその解決に至る道」の見せ方の違いではないか。 「本格ミステリ」では「謎」はジグソーパズルのピースのように、バラバラと探偵(読者)の前に「ばら撒かれる」。 「本格探偵」では「謎」は砂時計の砂のようにサラサラと探偵(読者)の前に「積み上がる」。そして大きく違うのは、「探偵は砂を集めてくる役割でもある」という点である。 (いうまでもないがこのふたつを完全に分... ...続きを見る

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2010/01/14 02:33
066 『誰彼(たそがれ)』 法月綸太郎
★★★☆ この作者の「特性」である、「探偵のあり方」が見え始めた作品。 基本的に「本格」における「探偵」は、世界を俯瞰で眺められる位置にいる、「神的目線」を持っている、といえる。しかし「探偵法月」は非常に人間的である。しばしば間違った推理を披露してしまうし、登場人物に、或いは犯人にさえ感情移入してしまうし、時には権力に頼り、逆に縛られたりもする。 そして「人間的である」ことが、この「探偵と同名の作者の」本格ミステリや謎に対する考え方、立ち向かい方にそのままあらわれている。(そのことを「ハー... ...続きを見る

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2010/01/13 02:56
065 『雪密室』 法月綸太郎
★★★☆ 「探偵法月」のシリーズの第1作であり、「事件自体は、王道も王道の本格ミステリ」の謎と解決である。 しかし、「王道」からわざと外したような点も多く見受けられる。 例えば登場人物の描きかたであったり(「新本格」としては厚く多面的だし「ミステリー」としては「キャラが過剰」という感じ、だろうか)、探偵役の「背景」の不透明さであったり、ラストでの物語の着地であったり…。 どのような方向からも、「なぜ」が強く問われているように見える、「本格らしくない」ことの一因はそこの辺りにあるのではない... ...続きを見る

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2010/01/12 02:15
064 『密閉教室』 法月綸太郎
★★★ 「探偵法月」が登場しないこともあり、デビュー作でありながら、かなりの「異色作」といえる。 これだけ難解で複雑な事件に対し、それを上回る量の「推理」がなされ、これまた恐ろしい量の伏線が回収され、ラストでの収束に繋がっている。作者の「方向性」というか「思考」というか、そういうものが垣間見える。 さすがにデビュー作であるから、今から見ると「キズ」は多いが…。 例えば「謎」の設定、メイントリックは非常に美しい、驚けるトリックなのだが、傍流にあらわれる「謎」や「人物」が多過ぎ、それぞれが散... ...続きを見る

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2010/01/11 05:36
063 『放浪探偵と七つの殺人』 歌野晶午
★★★★ 初期3部作の探偵役、信濃譲二が久々に登場する短編集。 同じ短編集、『正月十一日―』に比べると、トリック、ロジックに重きを置いた作品が多い。舞台・人物・小道具・動機やストーリーはなるべく削ぎ落とし、キチっと固めたような印象。 トリックとして思いついたアイディアが最大限生かされている、と思う。 ...続きを見る

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2010/01/10 05:30
062 『死体を買う男』 歌野晶午
★★★☆ 「本格ミステリ」としてはかなり「野心的」というか、「挑戦的」であり、「異色」の作品でもある。 これは「作中作」のあるミステリであり、その小説を書いたのが江戸川乱歩である、という設定なのだ。「奇想」というに相応しい。当然のことながら、まず作者は乱歩の文章、時代、更にその人そのものを、「模倣」することが求められる。(個人的には乱歩を読んだ絶対量が少ないので、その「出来」について云々できない) そして、そのようにして構築した世界の上で、「本格ミステリ」を成立させ、その上でその物語を現在... ...続きを見る

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2010/01/09 02:48
061 『正月十一日、鏡殺し』 歌野晶午
★★★★☆ 歌野の短編集としては最高傑作、「新本格ミステリ」の短編集としても屈指の作品だと思う。 この作者のこの時点でのスペシャリティは「充足と収束」とまとめられるのではないか、と考える。特に短編で顕著だが、それぞれの作品はロジックとしてあり得る形の全てを網羅し、その全ての可能性の中からあるべき一点に向かって収斂されていく。その道筋は正方形を45度に傾けたようなイメージ。 それでいて、その「材料」として登場したはずの「人間」が恐ろしく人間臭く、リアルを感じさせる。 ...続きを見る

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2010/01/08 03:40
060 『ROMMY 越境者の夢』 歌野晶午
★★★★☆ 作者はこの作品辺りから、「真価」を発揮しだした気がする。「本格ミステリ」を完全に「自らの手の内にいれた」という印象の作品。(作者自身はそこに留まり続けていないが) 登場する「本格ミステリ的謎」は珍しいものではない、例えば「誰が誰か」という問題や「死体損壊の理由」、その他。しかしそれらの謎は、大きなものから細かいものまで「有機的な繋がり」を持っている。いくつもの謎がそれぞれ他の謎に必然性を持って関わり合い、一連の犯罪を形作っている。 そして更にその「骨格」に、「テーマ」や「人間」... ...続きを見る

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2010/01/07 06:23
059 『さらわれたい女』 歌野晶午
★★★★ これも「誘拐モノ」、そして当然だが、タイトル通り誘拐は「狂言」である。 作者はここまで手の内をさらし、その上で「反則技」を使わず、美しく「本格ミステリ」におさめている。 「狂言誘拐」では「動機」がかなり難しい、誘拐する者、脅迫される者、そして誘拐される「真犯人」、すべてに十分な「動機」がいる、そこが「核」となる。単純なものではすぐにはがれるし、その裏側までしっかり考えられ、行動の裏打ちにならなければ事件が成立しない。(連続殺人なら、「動機」はひとつでも十分書ききることは可能だ) ... ...続きを見る

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2010/01/06 03:23
058 『ガラス張りの誘拐』 歌野晶午
★★★☆ 当然だが、タイトル通り「誘拐モノ」。 誘拐は実際に行う場合と同じく、ミステリとしても「縛り」が厳しい、「割に合わない犯罪」というところ。 中でもネックとなるのは「トリックの見せ所」の問題だろう。ただ単純に「さらう」だけならトリックはいらないし、例えば身代金の受け取りに斬新なトリックを思いついてもそれだけでは長編にならない。 (元々「誘拐モノ」は短編では書きづらいか) もうひとつ決定的なのは「舞台が限定できない」という、本格ミステリには相当厳しい「縛り」である。論理を徹底するの... ...続きを見る

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2010/01/05 06:41
057 『動く家の殺人』 歌野晶午
★★★ シリーズの3作目。これはさすがにネタバレ寸前、覚悟を決めるか、引き返すか、判断を。 ...続きを見る

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2010/01/04 05:24
056 『白い家の殺人』 歌野晶午
★★★ トリックに「偶然」がプラスされて「謎」の解明が難しくなる、という展開は「本格ミステリ」にはそう珍しいものではない。純粋に「犯人の計画通りに犯罪が進む」ということは、「思わぬ邪魔が入る」or「思わぬ助けが入る」ということより珍しいだろう。「邪魔」は解決の端緒になるし、「助け」は推理にかかるノイズとなる。 また、読者の側からか見ると、当初の「魅力的な謎」に「思わぬ助け」が関わっていると、最後の「謎解きでの驚き」は減殺されるだろう。(それでも十分に驚ける謎も数多ある、のは書くまでもない) ... ...続きを見る

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2010/01/03 05:58
055 『長い家の殺人』 歌野晶午
★★★★ 作者のデビュー作であり、探偵「信濃譲二シリーズ」でもある。 ごくごくオーソドックスな、「本格ミステリ」らしいトリック。だがその「使い方」にはあまり前例はないのではないか。特異なひねりが効いている、そこが一番の読みどころ。 作者の描く人物にはリアリティがあると思う(ここでいう「リアル」とは「現実にいそう」という意味とは少し違う)。それを「やや平凡か?」と思ってしまうのは本格ミステリに普通に登場する「奇人変人」を見慣れてしまっているからかもしれない。 また、作者はなかなか多彩な「小... ...続きを見る

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2010/01/02 01:42
054 『人形はライブハウスで推理する』 我孫子武丸
★★★☆ シンプルな構造、「本格的」なアイディア+キャラクターの魅力とそこに生まれる物語。 小さなトリックと優しいストーリーの短編が5本と、ラストに掌編。何か嬉しいことがあった時用にとってある少し高級なチョコレートのようなイメージか。(チョコレートが嫌いな人もいるでしょうが) 「日常の謎の物語」というにはやや血なまぐさい事件が多いが、「日常が舞台の物語」であり、ミステリでもある、と思う。本格のトリックとしては、「ゲーム好きの死体」と「腹話術志願」が個人的には好み。 それにしても。前作から... ...続きを見る

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2010/01/01 05:30
052 『殺戮にいたる病』 我孫子武丸
★★★★ ストレート&シンプルかつテクニカルで、フェアなトリック、見事な「本格ミステリ」だ。 物語は序盤から「サイコ・キラー」による犯罪が、これでもかという様なグロテスクな描写で書き連ねられる。スプラッタが苦手な人は読まないほうがいいだろう。自分的にも「ギリギリ」だった…。 しかし、その文章自体が最大の「トリック」を成立させるために存在している、といえる。 物語の、犯罪の、伏線の「収斂」という意味で、この作品の到達した地点は驚異的である。ラストでうける「衝撃」は自分の読んだ本格ミステリの... ...続きを見る

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2009/12/31 06:08
051 『人形は眠れない』 我孫子武丸
★★★☆ 第3作では、「本格」の部分の割合が益々減少している。一見連作短編風にも見えるが、時節的には繋がっているものの章立て毎に事件が起こるわけではないし。 物語は、彼らの住む街に現れた連続放火犯を追いかけ追い詰める「ミステリ」部分が半分。残り半分は妹尾睦月に言い寄る「なかなかいい男」やその変な母親や、しかしそういうものに掻き回されていくことによって、彼女の中で段々はっきりと形になっていく気持ち、そういう小説的パートが半分。といった感じか。 読者にとっては「物語のこのシリーズがどのような方... ...続きを見る

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2009/12/30 05:24
050 『人形は遠足で推理する』 我孫子武丸
★★★ 「腹話術人形探偵シリーズ」第2作、早くも長編である。 ヒロイン妹尾睦月の幼稚園の遠足で、そのバスが乗っ取られる、というかなり異色なシチュエーションのクライムサスペンス、だろうか。結果、巻き込まれ的に犯人に替わって密室の謎を解かなければいけない立場に陥る。 「本格ミステリ」としての謎は、それ程大きくも目新しくもない、またラストの「驚き」もそれ程ではない。 しかし、このシリーズが「主人公2人と1人の物語」である、ということはハッキリ見えたし、そういう見かたで見れば、十分な「見所」と「... ...続きを見る

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2009/12/29 02:24
049 『人形はこたつで推理する』 我孫子武丸
★★★☆ このシリーズの「探偵」は「腹話術人形」である。この一文、理解できました?。 科学的・物理的に考えて、「人形(鞠小路鞠男)」は、推理も探偵も出来ない。されば、その人形使いである朝永嘉夫が推理や探偵をするのか、といえばそうでもない。 そのあたりは読んでみて、ヒロイン妹尾睦月のようにそこを「納得」してもらった上で、「それもアリ」と思って次も読んでもらえるかどうか、の話。 短編集で全4作。1作目はキャラクター紹介編、初めて鞠男はその「推理力」を発揮する。2作目は中ではかなり斬新なトリッ... ...続きを見る

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2009/12/28 05:54
048 『メビウスの殺人』 我孫子武丸
★★★☆ 3作目にして、作者の「裏の顔」が見えた作品、というと叱られるだろうか。 (ちなみに「メビウス」のマークが「8」を横にしたモノに似ている、ということが構想の時点であったらしい) シリーズとしてのエンタテインメント性やキャラクターはそのままだが、本作で行われる殺人は「救いがない」ものであり、最終的に明らかになる真実には「薄ら寒い思い」という形容が相応しいだろうか。 その後の『殺戮にいたる病』や『たけまる文庫 怪の巻』に顕れる作者のサイコ・ミステリ作家としての力の片鱗が見える。 で... ...続きを見る

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2009/12/27 06:02
047 『0の殺人』 我孫子武丸
★★★★ 非常に恐ろしい「本格ミステリ」である、特筆すべきはこの作者の「2作目」であることだ。 この作品で使われているメイントリックは、あまり言及できるタイプの物ではないので、「読んで見てください」と書いて終わりにする。しかし解決に至った時点での「驚き」という意味では、稀有な作品だろう。 ...続きを見る

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2009/12/26 04:36
046 『8の殺人』 我孫子武丸
★★★☆ 作者のデビュー作にして、一番「本格ミステリらしい」作品、かも知れない。 舞台は“8の字型の屋敷”。そこに連続密室殺人、怪しげな住人、素人探偵の推理合戦、解決とどんでん返し、マニアックな「作者注」、更には『密室講義』まで。「本格ミステリ」的なものがこれでもかと詰め込まれ、きっちりと「完成」されている。「しっかりした本格ミステリが読みたい」、そんな希望に確実に応えてくれる。 その上で付け加えるべきは、この作品がエンタテインメントタッチで書かれていること。「楽しいエンタテインメント小説... ...続きを見る

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2009/12/25 05:06
045 『モロッコ水晶の謎』 有栖川有栖
★★★★ このシリーズの短編集には、それぞれ「テーマ」がある、今回は「予言」。 はじめの2作は本道の「本格ミステリ」と言えるだろう、1作目は「誘拐」、メインは身代金引渡しのサスペンス…と思いきや。2作目は“クリスティの『ABC殺人事件』に競演を申し入れたアンソロジーのための作品”であり、この「ひねり」は効いている。 3作目は掌編、個人的にはこういう趣は大好きだ。 ラストに表題作。これも「ペルシャ猫の謎」に負けず劣らずの「異色作」だと思う。前3作での「予言」の扱われかたがそのまま「伏線」に... ...続きを見る

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2009/12/24 02:27
044 『スイス時計の謎』 有栖川有栖
★★★★☆ 国名シリーズはこの2作、作者の「書き得る形の多様性」を広げるような作品だった。それに対し、本作は完全に「本格ミステリのセンターラインを走る作品」と言えるだろう。 解説に倣って野球に例えるなら、「9回限定の押さえの切り札」という感じの1冊。その持ち球はホップするようなストレートと、消えたようにしか見えない切れ味鋭いフォークの2種類、それを思い切り真ん中に投げ込んでくる。こちらはバッターボックスに立ってストレートを呆然と見送り、フォークに空振りしてみっともなく膝をつき、4球目を投げて... ...続きを見る

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2009/12/23 02:58
043 『マレー鉄道の謎』 有栖川有栖
★★★★ 国名シリーズ第6作であり、2作目の長編であり、「密室モノ」である。 この作品が見せてくれるのは、作者の「守備範囲の広さ」と、それらを「書ききる筆力」だと思う。 「本格ミステリ」としての完成度は言うまでもなく、そこにトラベルミステリの風味と「社会派」と呼ぶに相応しい「背景・テーマ」を内包し、高い次元で融合した、作者の代表作のひとつである。 読んでいて、クリスティの「華やかな」ミステリを想いだした。 メインの密室トリックは十分なスケールだし、この解決場面はシリーズの中でも随一だと... ...続きを見る

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2009/12/22 04:09
042 『ペルシャ猫の謎』 有栖川有栖
★★★☆ ごく単純に言えば、「本格ミステリとしては異常な短編集」だろうか。 「本格ミステリから派生したもの」に、そこからあふれだした作品、わざと外れた作品、それを壊そうと意図した作品、様々な形があるが、この短編集は「その道からふと横の暗闇に隠れたような作品」が集められている、という印象。そしてそれを、常にその「道」の中央を真っ直ぐ歩いている作者がやったことで「異常」は更に際立つ。 中でも表題作の「謎」の解決、これは「どうなのか」、評価が分かれるのは間違いない。 個人的には一読後はひどい点... ...続きを見る

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2009/12/21 02:02
041 『英国庭園の謎』 有栖川有栖
★★★☆ シリーズ4作目にして、「衒いなく本格ミステリの真ん中を行く」ということを改めて感じた短編集。 この作者の書くものには、「いい意味で」書くこと自体や方向性への苦悩が見えない。それ自体は「シリーズモノ」には非常にいい土俵でもある。物語は奇を衒わず、加減がよく、つまり「安心感」がありシリーズ自体を揺るがすような何かの心配、をする必要はない。 (いや、「なかった」と書くべきだろう、「国名シリーズ」も次作から「時代の要請」か、かなり「本格」を越えようとする作品が現れる) にしても短編集の... ...続きを見る

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2009/12/20 02:25
040 『ブラジル蝶の謎』 有栖川有栖
★★★★ 表題作のラスト、これはこのシリーズを読むのなら外せない。 「名探偵役」というものの存在理由や事件の謎を解決する意味付け、それは「本格ミステリ」を書く上で避けては通れない課題だと思う。 それに対してこのシリーズの探偵役、火村英夫は「珍しく」、その意味を初めから(公的に)与えられているキャラクターである。 だがそれは逆に、現実にどこかで繋がれた事件を扱うことしか許されず(このシリーズ、特に短編集ではほとんどが市井の事件であり、「幻想的」といえるような破格の「謎」が提示されることは少... ...続きを見る

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2009/12/19 05:27
039 『スウェーデン館の謎』 有栖川有栖
★★★★☆ この作者の「本格ミステリ」をそのまま再現したような、「スウェーデン館」とそこで起こる事件。 「スウェーデン館」は、材料の原木から選びぬかれた素材を使ったログハウスである。 雪の中に立つ館、屋根はスカイブルー、窓枠は黄色と国旗を模しておりポーチがあり、ドアにはステンドグラスが配されている。 リビングは広く吹き抜けになっており、薪ストーブがあり、そこに並ぶ調度品はシンプルで洗練されたものばかり。 “すべてが調和を保っていて、心地よい”作品内作家有栖川有栖の感想である。 この「... ...続きを見る

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2009/12/18 01:38
038 『ロシア紅茶の謎』 有栖川有栖
★★★★☆ 「作家アリス」シリーズであり、クイーンを「向こうにまわした?」、「国名シリーズ」の1作目でもある。 表題作は、「毒殺」。個人的には好きな殺害方法である。 毒殺は「地味だ」とか、「現実には難しい方法だ」とか、あまり人気はないようだが…。 毒物を使った犯罪の場合、その使い方如何によって「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」、全ての謎を形作ることができる。(皆さんもそれぞれの用いられ方をした作品を思い出してみてください) 本作はこの5W1Hの謎をかなりの網羅... ...続きを見る

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2009/12/17 04:35
037 『46番目の密室』 有栖川有栖
★★★★ いわゆる「作家アリス」シリーズの第一長編であり、「密室もの」である。 「探偵のシリーズものの1作目」というのは、後から読むとあらが見えやすい物が多いが、この作品にその心配はない。 作者が「本格」という建築物を立てる時、ロジック・プロットに手を抜くことはない。十分な頑丈さを持った、隙のない土台、柱、壁、屋根を作る、だが外観は大抵ありきたりな建物。だが、次に選択する部屋の内装には、「人」が快適であることを求めている。「動機」に代表されるそこに集う人々の「気持ち」を歪ませるようなことは... ...続きを見る

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2009/12/16 04:17
036 『マジックミラー』 有栖川有栖
★★★★ 「デビュー作にはその作家の全てが顕れる」、ありふれた表現だが、この作品(デビュー作ではないが)には作者の、特に「トリック」という面での「幅広さ」が網羅されているように感じる。 「アリバイトリック」に「時刻表トリック」「双子のトリック」に…、他にも。しかしこれでネタバレだと思ってもらうと困る。どんなトリックが使われているか、が分かっていてもこの事件の「謎」を解くには「取っ掛かり」にもなるかどうか。 自分の思うこの作品の特長だが、「2種類の推理が行われている」ことだと思う。 ひとつ... ...続きを見る

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2009/12/15 01:42
035 『山伏地蔵坊の放浪』 有栖川有栖
★★★☆ 異色の短編集、海外古典の作品に同工のがあるが、それにしても「こういう手もありか」と嘆息する。 (自分の場合その古典作品を読んだ直後に偶然にもこれを読んだ。こういう「奇縁」が「本格」に引きずり込まれる要因になるよな) ある地方都市のスナック≪エイプリル≫に集まるミステリ好きの常連客と、「山伏」。この「正真正銘の山伏」が探偵であり、ストーリーテラーでもある。語られるストーリー実に様々、魅力的な「謎」と「その解決」を約束されたミステリばかり…という具合か。 個人的には「崖の教祖」と「... ...続きを見る

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2009/12/14 05:01
034 『孤島パズル』 有栖側有栖
★★★★ 前作と比べて、非常な成長がみられる。「本格」に備わるべきアイテムがそれぞれしっかりと形を持ち、物語を構築している。 例えば、「動機」。そしてそれと反する心、犯人の葛藤はラストに見事に表される。 或いは、「伏線」。多くはないが、決定的で推理の意図の見事な端緒となっている。 または、「トリック」。やや新鮮味には欠けるかもしれないが、幾何学的に美しい。 更には、「謎と推理」。初めの「パズル」から最後の解決まで、「完全に十分」と思う。 そして。「探偵」。作者の、物語に対する姿勢が江... ...続きを見る

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2009/12/13 06:21
033 『月光ゲーム』 有栖川有栖
★★★★ 「読者への挑戦」・「フーダニット」・「クローズドサークル」、プラス「青春小説」。 自分のイメージする「本格推理」に限りなく重なる意匠立てであり、読んでみれば実際に「新本格推理そのもの」である。 しかし、自分がこの作品に対して「驚いた」のは、プラスの部分の「青春小説」であること、でもある。 正直に言って「青春小説」としての「出来」についてはあまり多くを述べる度胸も経験値も持たないのだが、この小説が「本格」であることと同時に「青春小説」であることも狙って書かれており、当然「本格」と... ...続きを見る

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2009/12/12 05:04
032 『朝霧』 北村薫
★★★★☆ シリーズ第5作であり、短編集(3本)。3・4作めでやや「らしさ」から離れていた感を持った自分には嬉しい原点回帰。 で、多分シリーズ最終作。実際どうかは知らないが(知っていたら教えてください)、もう10年以上経っているし。 この作品の「終わりかた」としては悪くないと思う。「私」の「成長物語」という「半面」をもつストーリーであるから、これから先、色々な意味で「普通」にならざるおえないだろう今後を描くのは「?」な面が大きいのではないか。 ...続きを見る

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2009/12/11 05:24
031 『六の宮の姫君』 北村薫
★★★★ シリーズ4作目にして、芥川龍之介の(そして菊池寛の)「六の宮の姫君」を卒論のテーマに選んだ「私」が、そこでみつけた「ミステリ」に挑んでいく、「日本近代文学ミステリ」である(歴史ミステリの範囲かなぁ)。 この作者についての感想を書き出すと、どうも作品自体にたどり着かない。 短編集ならば、解説自体が難しいこともあり、作者について、とかでお茶をにごすのだが…。 そして本作。元来北村薫の「日常の謎」を構成するあらゆる物の中で、「日常」なのは「原材料」だけであろう。 逆にいえば、我々も... ...続きを見る

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2009/12/10 02:16
030 『秋の花』 北村薫
★★★★☆ 円紫師匠と「私」シリーズ初の長編であり、始めて人死にが発生する作品でもある。 「本格ミステリ」が楽しめるのは、その「非現実性」からである、といっても過言ではないだろう。 まず先の主役犯人、その動機、事件自体の異常性、トリックに淫する精神。それらの「非現実性」。 次に脇役、設定された舞台や小道具、登場人物。それらの「非現実性」。 止めに後の主役探偵、謎を探し出し、結びつけ、疑い、意味を考え、一つにまとめる頭脳、その「非現実性」。 (このあたり、あくまでも話を進めるための方便... ...続きを見る

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2009/12/09 04:33
029 『夜の蝉』 北村薫
★★★★★ ただ単に大好きな作品。円紫師匠と「私」シリーズの2作目、短編が3本。 そういえば。この作品も「嫌い」或いは「面白くない」と言う人が割合多い、そして「嫌い」と言う人はそう言うことをためらったり、「迫害」を恐れて隠したりしがちでもある。ちょっと特徴的だと思う。 「嫌い」・「面白くない」の理由は大概が、キャラクターと舞台に関するものという印象がある。曰く、「こんな女子大生はいない」とか「こんな家庭はありえない」とか、そういう点があがる。 まあそうですね、かなり理想化されたキャラクタ... ...続きを見る

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2009/12/08 04:15
028 『マニアックス』 山口雅也
★★★★ 前作「ミステリーズ」よりも、「サイコミステリ」の要素が強くなった気がする。 しかしそのスタイルは、洗練され、バリエーションも増えている。サイコにスラップスティック、SF、ショートショート風など書きたいテーマに合ったスタイルがとられ、前作よりも読みやすい。 作者は、守備範囲の広さに加え、それぞれのポジションで必要とされる動きのコツ、のような物を見せてくれる。 ...続きを見る

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2009/12/07 04:55
027 『ミステリーズ《完全版》』 山口雅也
★★★☆ 豊富な知識、シニカルな世界観、「十分」でありながら「限界」には見えないロジック。 「芸術家」と「職人」、ふたつの面を持つ作者がその「技巧」のみを抽出し、様々な短編として並べた作品集。 それにしても難解、表された形を見てもそう簡単に何が描いてあるのか分からない、細密な騙し絵のよう。 ...続きを見る

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2009/12/06 06:24
026 『続・垂里冴子のお見合いと推理』 山口雅也
★★★ このシリーズに現れる作者「らしさ」について。 例えば、「キャラクターがかなり変」だという点、妹の空美が目立っているが他のキャラクターも非常に個性的。 (だが探偵が「待ちタイプ」の今シリーズにおいて、空美の「持ってくる力」は欠かせないものだろう) 又は、「道具立てがかなり変」だという点、本作だと2作目や4作目等は作者の広い知識をちらりとうかがわせる。 そして、パンクでもクレイジーでもない、優しい雰囲気の世界をしっかりと包み込むように描いた文章の力、当然ながらこれが核になってこの世... ...続きを見る

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2009/12/05 05:06
025 『垂里冴子のお見合いと推理』 山口雅也
★★★ 山口雅也版、「日常の謎」だろうか、人死に多いが。もしくは「キャラメインのミステリ」だろうか。 作者の腕を考えれば、「安心して読めるシリーズ」といえる(最近新作が出ました)。 トリックは、「本格」のそれを「煎じて丸めた」ような雰囲気。 言い換えるなら、本格の「トリック標本箱」から見事なものを抜き出して、作者らしいひとひねりを加え、「創作日本料理」として完成させたような、作品集。 (短編集の感想は難しい…) ...続きを見る

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2009/12/05 05:01
024 『續・日本殺人事件』 山口雅也
★★★★☆ この作品は…、「小説の限界を描いた作品」と言えるだろうか。 第2話「実在の船」のラストにおける「解決」は、あらゆる小説の「解決」でもありうる。 「ロゴス=論理・言葉を疑い出せば、小説、特に「本格」は即死する」、そんな風。 前作の感想の時も、「一般的な小説」と「本格ミステリ」を並べて書いたが、今回もそうなる。 「一般的な小説」は、「ロゴスを使って」書かれている、故にそれを信じないなら「小説を読む事」の意味は薄くなる。 「本格ミステリ」は、「ロゴスに依って」書かれている、故に... ...続きを見る

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2009/12/04 06:08
023 『日本殺人事件』 山口雅也
★★★★ この作者は「本格の作家」である前に、「世界の作家」だと感じる、文字通り「世界」を「作る」のだ。 デビュー作もそうだが、作者が得意とするのは「現実とは違うルールが支配する世界での本格」である。その意味で、この作品はこの作者「らしさ」が最も発揮されている、とも思う。 本来「本格」というのは一般的な小説より不自由である。例えば作者が、「登場人物が河童と喋った」と書いた場合、「本格」ではそれを作品内で、論理的に、現実的に、徹底的に「証明する」ことを求められる(あくまで原則だが)。「非現実... ...続きを見る

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2009/12/03 04:48
022 『絡新婦の理』 京極夏彦
★★★★☆ 「京極小説ここに極まる」という印象、その筆致はピークかもしれない。 「小説」としてのまとまり、エンタテインメントとしての面白さ、読んだあとの爽快感、「完成した」という感じ。 ...続きを見る

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2009/12/02 05:18
021 『鉄鼠の檻』 京極夏彦
★★★★ まず、京極小説は「解釈」を許さない。小説をまとめること、要素をつかみ出すことを許さない。 また、京極小説は「飛躍」も許さない。読者が小説から別の可能性を見つけ出すことを許さない。 作者はこの膨大ともいえるヴォリュームを完全に使いこなして書きたいことを全て書ききっている。 他に類を見ない程の言葉を使って、書きたいことの全てを書ける書きかたの全てで書いている、とでも言おうか。 或いは、「行間」というものを完全に書き切るためにこれだけのヴォリュームがいるのだ、ということか。 ...続きを見る

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2009/12/01 04:53
020 『狂骨の夢』 京極夏彦
★★★★ 京極小説の中ではかなり「本格度」の高い作品。 序盤に提出される「謎の奇妙さとスケール」、そして終盤でそれが解かれた時の「得心と衝撃」という本格らしさでは、他の作品を上回っている。 作者の書く物語が毎回恐ろしく膨大な量になるのは、作者が「全てを書く」からであろう。 自分は、本格ミステリでは基本的に、物語内に登場する全てのモノは「パズルのピース」である、と考える。 そのピースが全てはまることで「謎」は解かれ、パズルが描く「絵」が見え、完成する。 京極小説が他の本格ミステリと違う... ...続きを見る

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2009/11/30 02:04
019 『魍魎の匣』 京極夏彦
★★★★★ ミステリ的なトリックでいうと『姑獲鳥』の「反転焼」と言ったところだろうか。 前作を反対側から書くとこうなる、と。作者が2作目で重視したのが、「雰囲気を作ること」だと思う。 冒頭の、久保という作家の「小説」、そして序盤の少女マンガの様な物語の進行、そして中盤以降は刑事木場修の「ハードボイルド」、更に2作目にしてしっかりと形を持ち、ファンをも獲得した京極堂の「うんちく披露の儀」(今回では文庫版273ページに始まるオカルト講義)も既に形をなしている。 きっとこの時点で、彼の書く小説... ...続きを見る

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2009/11/29 02:52
018 『霧越邸殺人事件』 綾辻行人
★★★★★ 1990年に刊行された、「館シリーズ番外編」といえる文庫版でも700ページに迫る大作。 「クローズドサークルもの」であり、「同じ志向を持つ若者たちのサークルの事件」であり、どこにあるかも不明瞭な「霧越邸」という建物が「事件の主役」であり…。と、作者の第1作『十角館の殺人』の正嫡としての「資質」は全て備えた作品である。 で、ありながら「番外編」なのである。なぜか。 この事件は「非論理性」という、本格ミステリには相応しくないどころか、「仇敵」のようなモノに覆い尽くされ支配されてい... ...続きを見る

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2009/11/28 04:26
017 『黒猫館の殺人』 綾辻行人
★★★★☆ 中村青司という奇才の建築家が各地に建てた意匠をこらした「館」、そしてそれらの「館」が引き寄せたかのように起こる「事件」の数々…、「新本格」の始まりを告げ、その「本道」を拓いていったシリーズ。その第6作。 そしてその「館シリーズ」であることが最大限に発揮されたトリックだと思う。 この作品は「プロット=構成」の切れ味が秀逸な作品である。それが本格としての「フェアさ」を担保している。 数多に張られた伏線、微妙に感じる疑問、引っ掛かる違和感、それらを統合した時に感じる「館」に対するあ... ...続きを見る

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2009/11/27 04:13
016 『時計館の殺人』 綾辻行人
★★★★★ 「本格ミステリ」はこのシリーズで描かれている「館」のような建築物に例えられるのではないだろうか。 本格ミステリの「館」は、堅牢で、装飾に満ち、美しく、機能的で、秘密を持ち、何かのコレクションなどガジェットにあふれ……それでいて密度の濃い破滅の香りを漂わせる。 そして、その「館」には「仕掛け」が施されている。何の変哲もない石壁の一つを押すとその「館」自体が完全に崩壊する、といったような。 作者はその「仕掛け」を読者に覚られないように物語を進め、犯人は「トリック」を探偵に気付かれ... ...続きを見る

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2009/11/26 02:58
015 『人形館の殺人』 綾辻行人
★★★★☆ 「館シリーズ」の中でも一、二をあらそう「大きさ」と「反響」のトリックが使われた「異色作」である。 作者は気に入っているようですし(文庫版あとがき参照)、自分個人的にも好きな作品。 また、この頃からスタートした「囁きシリーズ(3作)」や『フリークス』への繋がりを感じさせる。 なんというか、作者の書ける範囲=「テリトリー」と言うものが見え始めた(それはとても広大で呆然としました)、そんなポイントになった作品でもあるだろう。 あまり書きすぎると読んだ時の「衝撃」が薄れる、書けるこ... ...続きを見る

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2009/11/25 03:59
014 『迷路館の殺人』 綾辻行人
★★★★ 『水車館』のわずか半年後に出された第3長編で、ちなみに次の『人形館』までも半年(その間に『囁き』シリーズすら始めている)…このペースは無理だとしても…。次の「館」、末永くお待ちしています。 今作で作者が「本格」から取り出し、魅せたエッセンスは「過剰」と「遊び心」ではないか(作中にも出てくる言葉)。 「本格ミステリ」が否定的に評される時に用いられる、「荒唐無稽」・「悪趣味」という言葉はこの2つの全くの裏返しだろう。 この、「小説を小説に閉じ込めた、始まりと終わりが2つある」構成を... ...続きを見る

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2009/11/24 03:24
013 『水車館の殺人』 綾辻行人
★★★★☆ デビュー第2作。シリーズでも屈指の「古典本格」風味の作品だと思う。 第1作で作者は、本格の「骨」、「謎解きのカタルシス」に焦点を絞った。 本作では、本格の「肉(でいいのか)」、つまり「素材」に力をいれているように思える。舞台は「孤立無援の館」だし、事件から1年後、同じメンバーが集まるという設定や、登場人物もマスクをかぶって正体は分からない主人、その妻は年の離れた「幽閉された」美少女――。 当然のように聞こえてくる‘アナクロ・オールドファッション・レトロ’そういわれたなら作者は... ...続きを見る

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2009/11/24 03:21
012 『人狼城の恐怖(全4部)』 二階堂黎人
★★★★★ 「史上最長の本格ミステリ」だそうである、「二階堂蘭子シリーズ」の7作目であり、当然最大の事件だろう。 物語―ドイツ・フランス国境の山奥にそれぞれ「銀」と「青」の「人狼城」と呼ばれる2つの古城がある。 1970年6月、この2つの城に、これまでに無く多くの客が招かれ、その数日後には両方の城で10人を超える死者が出ていた、という未曾有の事件が起きた、ここまでで1部(ドイツ)と2部(フランス)。 探偵役が登場するのは第3部、探偵としての仕事ができるようになるのは4部を待たねばならない... ...続きを見る

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2009/11/23 06:02
011 『完全無欠の名探偵』 西澤保彦
★★★★☆ この作者で、最初に紹介するべきは、この作品ではないのかもしれない。 しかし、彼のフィールドである「SFミステリ」と、匠千暁シリーズに代表される「家族友人ミステリ」の中間点にあるのでは、と思ったので…。 今回はは前者の作品を主に。 ...続きを見る

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2009/11/22 06:04
010 『@(アイ)鏡に消えた殺人者』 今邑彩
★★★★☆ 「女性の本格ミステリ作家は、男性のそれよりだいぶ少ない」と言っても男女差別には当たらないだろう。 「本格ミステリ」は「性別による得手不得手」が顕著に現れるジャンルなのかもしれない。 (北村薫著:「ミステリは万華鏡」の第9章を「言い訳」にそえておく) 物理的トリックや時間的トリック、論理的トリックなどを書く女性作者はあまり多くない。 (しかし、トリックが心理トリックに該当する場合、それ程男女間に差は感じない) ...続きを見る

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2009/11/21 05:18
009 『異人たちの館』 折原一
★★★★☆ 「叙述トリック」についてごく初歩的な解説をしようと思う。 「叙述トリック」とは、文章の書きかたによって読者にあやまった「理解」をさせることで成立するトリックといえるだろう。本格ミステリの暗黙のルールに「3人称を使った文(字の文)にウソを書いては行けない」というものがある。ごく初歩の例として、Aさんが「死体を見た」と喋った場合。これは真実で無い場合がある。誰かにそう見せられたのかもしれないし(偽者もありうる)、その時点では死んでいないかもしれないし、Aさんに他意があって偽証をしたか... ...続きを見る

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2009/11/21 05:17
008 『ふたたび赤い悪夢』 法月綸太郎
★★★★☆ 「本格ミステリ」の世界に置いて「探偵」の仕事は最終的には「神」の位置に到達すること、といえよう。 まず。本格世界における「世界そのもの」=「事件」であり、それを全て知るものが「犯人」=「神」ということになる。しかし「探偵」は「犯人」の起こした「事件」を全てつまびらかにする(=「本格ミステリ)。 それによって「犯人」は「事件」の中のひとつの要素に成り下がる。(かなり乱暴な進行ですが一応の筋) ...続きを見る

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2009/11/20 06:28
007 『世界の終わり、あるいは始まり』 歌野晶午
★★★★★ この作者は、「新本格」の先頭を走っているといって過言ではない。 2002年の本作、その前々年『安達ヶ原の鬼密室』そして翌年の『葉桜の季節に君と思うということ』である。 3冊の種類の違う「傑作」を生み出している。同じタイプの作品で良い物を続けることは無理ではないが、異なる次元で「驚くべき成果」を続けて生むのは奇跡だと思う。 (『安達ヶ原―』は古典本格に近いし(見せ方は驚き)、『葉桜―』は新本格トリック+上質な物語だろうか) 『世界の終わり――』は、本格ミステリの存在基盤そのも... ...続きを見る

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2009/11/20 06:21
006 『探偵映画』 我孫子武丸
★★★★☆ この作品をこの作者の「ベスト」に選ぶのは、疑問かもしれない。 が、この作者のストロングポイントは、「作風の幅の広さとそれぞれの完成度の高さ」ではないだろうか。 初期3部作におけるキャラクターの分かりやすい魅力や、「硬い本格」はいうまでもなく「ユーモア」から「サイコ」、さらには「本格」を一段越えた地点から見た作品まで、それぞれを高いレベルで書き分けている。 (「人形」シリーズ・「殺戮にいたる病」・「少年たちの四季」・「弥勒の掌」…) ...続きを見る

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2009/11/19 06:45
005 『双頭の悪魔』 有栖川有栖
★★★★★ この作者は、「新本格」のスタート時から現在まで、ずっと中心を歩いている。 作風は同世代のメンバーの中で一番「古典本格」に近く、多少本道を外れた作品を書く事がニュースにさえなる。 そんな作者においてこの作品は、最も本格「らしい」といえるのではないだろうか。 物語としてはシリーズ(通称:学生アリス)の第3作にあたり、3つの大きな謎と対応する3つの「読者への挑戦」が置かれ、文庫で700ページに迫るボリュームを誇る。 さて。自分が思うこの作者の一番の「魅力」は「バランス感覚」である... ...続きを見る

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2009/11/19 06:44
004 『空飛ぶ馬』 北村薫
★★★★★ その作品が「本格ミステリ」なのか、或いはその作者が「本格ミステリ作家か」は、作品を読むまで分からない。 自分は、「本格ミステリ」が書けるかどうかは資質的なものではないか、と思っている。 それを持つ人は、本格ミステリ「も」書ける、と思っている。 (ちなみに、作品の範囲が本格ミステリの域を出ない作者もいる、ように思う) さて。この作者は本格ミステリ「も」書ける作者であり、中でも非常にコアな資質を持っていると感じている。 そしてその上、素晴らしいストーリーテラーでもある。こうい... ...続きを見る

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2009/11/18 04:22
003 『生ける屍の死』 山口雅也
★★★★★ この作品はかなりの「硬度」の「本格ミステリ」といえる。 「犯人VS探偵」という構図、驚愕必至の動機の設定、主人公を初めとした魅力的なキャラクター等々。 ただひとつ、他の作品と違うのは、死んだ人間が生きかえること「だけ」である。 そこ以外は極めて「硬い」、純粋な「本格ミステリ」である。 考えてみて欲しい。 「新しいコード」を使い、そこで起こる可能性を全て取り込み、物語を完璧に収束させるのは驚異的に難しい。 ...続きを見る

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2009/11/17 05:51
002 『姑獲鳥の夏』 京極夏彦
★★★★★ これを初めて読んだ時、「新本格を超えた」と思った。 ここで自分の「本格ミステリの定義」をしてもはじまらないのは百も承知だが… 「本格ミステリ」には「暗黙の」〜「絶対の」まで、様々なレベルの「コード」が存在する。 「どれだけ厳しいレベルのコードを守っているか」によって「本格度」は増すのだろう。 しかしそれがそのまま「面白さ」に繋がるわけではない、当然。 「本格ミステリ」では「読者を裏切る」ことも、それ以上に求められるのだから。 ...続きを見る

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2009/11/17 05:20
001 『十角館の殺人』 綾辻行人
★★★★★ ご多分にもれず、ここから入ったクチだ。 その前の読書歴は… これもありがちで、ホームズ・リュパンに始まり、クイーン・クリスティを数えるほど。 そこから宮部みゆき、東野圭吾。北村薫にたどり着いたのは(他の作者に比べたら)速かった。 ...続きを見る

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2009/11/16 04:20

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